対立から共存へ
[ 1737字|社会 (society) ] 有料第1回 約40年前「正義のための革命」に参加。キリスト教徒と共存しても、融合はせず
スペインによる植民支配が始まった16世紀半ばから、外敵に抗(あらが)い続けるモロ民族(ミンダナオ地方のイスラム教徒)。その反骨を支えてきたのは「父祖伝来の土地で、モロとして生きる」という強烈な土着意識だ。しかし、マルコス政権下の1960〜70年代、国軍や政府系民兵による土地収奪と虐殺行為が横行し、モロ・イスラム解放戦線(MILF)などの反政府武装勢力を勃興させた。40年以上にわたる武力闘争と和平交渉の結果、導き出された解決策は、10月中旬にMILFとアキノ現政権が調印した和平の枠組み合意。フィリピンという国家の形を保ちながら、イスラム教徒が土地と尊厳を取り戻す「共存の枠組み」が示された。2016年の最終和平合意へ向けた交渉が継続される中、父祖伝来の地に生きる人々の声に耳を傾けた。