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4月18日のまにら新聞から

中距離ミサイル配備を訓練 初の両海外合同演習も実施 総合軍事演習バリカタン

[ 1343字|2024.4.18|政治 (politics) ]

比米合同軍事演習バリカタンで、初の中距離ミサイル「SM6」の迅速配備訓練を実施

会見で記者の質問に答えるロヒコ大佐=17日、首都圏ケソン市クラウンプラザホテルで竹下友章撮影

 22日に始まる今年のフィリピンと米国との合同軍事演習「バリカタン」で、米軍は比国軍とともに、初めて中距離迎撃ミサイル「スタンダードミサイル6(SM6)」の配備訓練を行う。射程約560キロ(300カイリ)の同ミサイルと発射装置を、米軍は既にルソン地方北部に持ち込んでいる。比国軍のバリカタタン担当マイケル・ロヒコ大佐が17日、会見で明らかにした。

 また、初となる領海外での比米仏合同演習を、南沙諸島(比名カラヤアン諸島)のあるパラワン州西部の排他的経済水域(EEZ)内で実施する。さらに、大統領府報道班など複数の政府機関が参画する情報戦訓練も初めて実施し、イロコス州ラオアグ市沖では昨年に続き、領海内で退役艦を標的にした軍艦撃沈訓練も行う。

 実弾演習を含む実地演習は、最北端のバタネス州を含む台湾に近いルソン北部と、南沙諸島があるパラワン州西部を中心に実施される。公式には「どの国も演習を行うものであり、特定の国との戦闘を想定したものではない」(ロヒコ大佐)が、内容面では台湾有事、南シナ海有事に備えた総合演習といえそうだ。

 一方で、ロヒコ大佐は「軍事演習をする権利は大小を問わずどの国も持っている。そして国軍の存在意義は戦争に備えることにある。戦争に備えないことは、国への害となる」と強調。「中国があろうがなかろうが、こうした軍事演習をわが軍が遂行する」と述べた。

 同大佐によると、今回の演習で初めて配備される艦対空・弾道弾迎撃ミサイル「SM6」は、これまで米軍の駆逐艦に搭載して運用されてきた。今回の訓練では、空輸で陸上に配備できるかどうかをテストする。新しい発射装置の使用が試みられるが、今回はあくまで「兵站(へいたん)訓練」であり、実弾演習は行わない。SM6は地対艦、地対地ミサイルとしての運用も可能という。

 今回配備訓練が実施されるとみられるルソン島北西部からだと、2012年に中国が占拠したサンバレス州沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)を射程に収める。比政府は、同礁への中国による人工(軍事)施設の建設を「レッドライン」と設定している。

 また今年のバリカタンは、EEZ防衛を目的に今年始まった「包括的群島防衛構想」(CADC)を反映。パラワン島西方のEEZで行われる比米仏合同海洋演習には、比米の沿岸警備隊も参加する。EEZでの沿岸警備隊と海軍の「切れ目のない連携」の訓練を多国間で試みる。

 軍艦撃沈訓練は陸海空の兵器を総合的に用い、比軍は地上砲兵、艦砲、軽戦闘攻撃機FA50などを投入。米軍はステルス戦闘機F22、多目的ジェット戦闘機F16などを投入する。標的は退役した旧式揚陸艦「BRPカガヤン」(116メートル)。

 統合防空ミサイル防衛訓練も計画されており、米軍がサンバレス州で実弾演習を行う。軽車両からスティンガー地対空ミサイルを発射する「アベンジャー」、広域防空用の地対空ミサイルシステム「パトリオット」が投入される。

 今年のバリカタンには、比国軍、米軍から1万6770人参加する計画。これに豪州軍、仏軍のほか、比米の沿岸警備隊、比国家警察などが加わり、規模の上でも演習範囲の上でも過去最大の軍事演習になる見込みだ。(竹下友章)

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