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7月5日のまにら新聞から

比憲法をないがしろにするな 漁船衝突事件での大統領の言動

[ 861字|2019.7.5|社会 (society)|新聞論調 ]

 リード礁(比名・レクト礁)における漁船衝突事件で中国を擁護するドゥテルテ大統領は、南シナ海(比名・西フィリピン海)から中国漁船を締め出すことはできないと述べた。中国がそれを許さないし、「われわれは友達だから」できないというのだ。その恥ずかし気のない、卑屈なまでの覇権国に対する降伏的な態度は、自国民から信じられないものと受け止められた。

 その後、ドゥテルテ氏は2016年に北京を訪れ習近平国家主席と初会談した際、南シナ海における比の排他的経済水域(EEZ)で中国漁船の操業を認めることで合意したことも明らかにした。しかしこの合意はこれまで公表されてこなかった。大統領府もその詳細を公表していない。比のEEZでの中国の利用を許すことが憲法違反であることは、政治的立場を超えて、すべての分野の人たちが認めていることだ。裁判官や憲法専門家、学識者たちが大統領にすぐに注文を付けた。カルピオ最高裁判事も憲法第12条第2項を指摘して、「比はEEZにおける水産資源や石油、ガス、その他の鉱物資源を利用する排他的な主権を有している。この主権は国民に属しており、いかなる政府の役人も国民の同意を得ずにその権利を放棄することはできない」と主張している。

 しかしドゥテルテ氏は中国による侵略行為に毅然(きぜん)とした態度を取るよりは自国民に刃を向けるという安易な方法を再び選んでいる。彼はカルピオ判事を「バカ者」と呼び、自分を弾劾裁判にかけようとする者は刑務所送りにする、と脅した。さらに彼は憲法によるEZZ禁止条項について「考慮のない、意味のない条項だ」と吐き捨てた。もし自分が中国の友人を前に比憲法を振り回したりしたら、中国人たちは「そんな書物はトイレの紙に使え」と言うだろうとも述べた。

 いったいドゥテルテ氏は大統領就任式典で国に対し何を誓ったのだろう。「フィリピンの大統領として憲法を維持して守り…」と誓ったはずだ。中国政府のために自国の憲法をないがしろにすることは、国民に対する裏切り行為だ。(2日・インクワイアラー)

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