新聞論調
築いた礎に積み上げる ドゥテルテ政権2年目へ
ドゥテルテ大統領は6月30日、イスラム過激派との交戦が続く戒厳令下のミンダナオ地方で就任1年を迎えた。フィリピン全土に過激派組織「イスラム国」(IS)や超法規的殺人の脅威が広まる一方で、外交では今までと路線を変え、中国などと友好関係を築き上げ、巨額の支援も得た。政権2年目は、1年目に築いた礎に、さらに成果を積み上げていく年となるだろう。ドゥテルテ氏の手腕に注目が集まる。
過激派が各地で繰り返す襲撃や国軍との交戦、それらを制圧するために布告された戒厳令は、観光業と海外からの投資に少なからず影響を与え、さらにペソはここ10年で最安値水準を記録した。しかし世論調査では、1年前に高い支持を得て大統領選当選を果たしたドゥテルテ氏への国民の期待と信頼は相変わらず高い。
違法薬物撲滅政策下での麻薬容疑者殺害に対し、国内外から人権侵害と強い批判が出る中、麻薬問題や汚職撲滅に恐れることなく取り組み、大規模なインフラ整備での雇用創出、経済政策はドゥテルテ政権の姿勢は多くの国民の支持を得ている。
これまでの親米路線から親中へとシフトしアキノ前政権とは打って変わり、習近平国家主席と友好関係を築き上げたことはまぎれもなく1年目の成果である。しかし2年目以降に期待されるのは、どのタイミングで南シナ海の領土問題を本格的に議題に上げ、昨年出された仲裁裁判の判断に言及するかだろう。
領土問題だけでない。1年経過しても数億ペソ相当の覚せい剤が各地から押収され続ける麻薬撲滅政策、現政権の挑戦となる汚職撲滅やインフラ整備、税制改革など問題は山積みだ。(30日・スター)