直接批判避けた南シナ海 ASEAN首脳会議
4月29日に終了した東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の結論として、ドゥテルテ大統領は以下の議長声明を発表した。南シナ海問題についてのくだりはこうだ。
「南シナ海が平和と安定、持続的な発展を維持することで、長期的な恩恵が得られることを確認した」「地域の最近の開発に対する一部首脳の懸念に留意する。相互の信頼強化、自制、武力を使わない平和的な地域紛争解決の追求を複雑化するような行動の回避が重要と再確認した」
声明は最終的に、南シナ海での環礁造成、軍事化の中止を呼び掛けた当初の声明案を採用しなかった。声明案の文言は、中国への直接的なけん制だった。声明はまた、中国の古地図を基にした9段線を根拠とした中国の領有権主張を認めなかった2016年の仲裁裁判についても触れなかった。
ASEAN諸国は今回もこれまでの立場を維持し、中国の島しょ造成や滑走路、施設建設への直接的な批判は避けた形だ。仲裁判断に関する文言の盛り込みは、カンボジアが拒否したと言われているが、ドゥテルテ大統領も、今は中国と対立する時期ではないと判断している。
今回の首脳会議は、フィリピンが議長国を務める今年最初の首脳会議だ。11月には、ASEAN諸国と周辺国の計18カ国が参加する東アジアサミットが開かれる。
これだけ強力で、強い意志を持った国家が多く集まるのだから、会合で何が起き、何が決定するのかは想像しづらい。しかし、ドゥテルテ大統領が指揮する比なら、今回の首脳会議のように、うまく役割を演じるかもしれない。今回の会議では総意をまとめ、抜き差しならない状況に直面した際に合意形成するための各国共通の妥協点を模索したのだから。(3日・ブレティン)