新聞論調
ドゥテルテ政権の危機
ペルーの首都リマで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)から戻ったドゥテルテ大統領は、自らが認めたマルコス元大統領の英雄墓地埋葬に反対する人々と対峙(たいじ)することになる。大統領が認めたマルコス氏の英雄墓地埋葬は、反対派が大規模抗議集会を引き起こし、現政権が7月に発足してから最悪の局面を迎えている。かつてのマルコス独裁政権時代に負った傷口が再び開き、フィリピンの行く先は不透明になり、ドゥテルテ大統領退陣という事態も招きかねない。マルコス家の国民をあざむくような埋葬に現政権が共謀したことで人々の怒りを買い、抗議行動に発展したことは残念だ。
ラモス元大統領も秘密裏に準備が進められた埋葬について、国のために犠牲となり英雄墓地に眠る兵士にとって屈辱であると厳しく非難し、「ドゥテルテ大統領と現政権は支持者と友人を失っている」と警告した。ラモス氏は11月、ドゥテルテ大統領が進める独自外交、反米・親中露路線を批判し、対中国交渉特使を辞任している。今回のマルコス氏遺体の英雄墓地埋葬によってドゥテルテ大統領とラモス氏の間に生じた亀裂はさらに深くなった。
ドゥテルテ大統領は今、マルコス元大統領の英雄墓地埋葬を認めた自分の決断に対し国民に支持を訴え、マルコス家を許すように懇願する。一方で、大統領と軍人という英雄墓地埋葬の条件をマルコス氏は満たすと法律を振りかざす。
マルコス元大統領は英雄かという問いに、ドゥテルテ大統領は抗議集会参加者の判断に任せると答えた。
ドゥテルテ政権は人々の収まらない怒りを深刻に受け止めるべきだ。人々は裏切られたと感じているのだから。(23日・インクワイアラー、アマンド・ドロニラ氏)