「水なくトイレ流せない」 セブの日本人社会にも大打撃 台風22号の死者数増加も
ビサヤ地方を横断した非常に強い台風22号の死者数が前日からさらに9人増え21人に
18日の英字紙スター電子版によると、16日から17日にかけてビサヤ地方を横断した非常に強い台風22号(比名オデット)の死者数が、前日から9人増えて21人となった。
ビサヤ地方や北部ミンダナオ地域では、暴風雨で電柱や木々がなぎ倒され、家屋が倒壊し道路が寸断され、現在もインフラ機能が停止した状態が続いている。
AFP通信は国際赤十字のボカネグラ氏のコメントとして「台風22号は比の12月の台風としてはここ10年で最も強い」との指摘を引用した。
セブ日本人会の松田和人会長は、まにら新聞に「18日になってやっと電話ができるようになった。セブ市、マンダウエ市の多くのエリアでは水道、電気、道路は壊滅状態にある」と被災地の現状を訴えた。現時点で日本人死傷者は報告されていないという。
松田会長によると、一番困っているものは「水」。「貯蔵してあった水を少しづつ使っているが、水道が止まっているためトイレなど生活用水にも困っている。持っても数日」だと語った。
電気が復旧していないことから、セブ市やマンダウエ市では信号機が停止したままだ。松田会長は自動車の発電を利用して携帯を充電し、車内エアコンで涼をとっているため、車内が仮の生活スペースとなっていることも明かした。営業を開始したガソリンスタンドもあるが、同じ境遇の人々が列を成し、給油が数時間待ちになっている。
スーパーは開店し始めたが「問題はお金」。広範囲で停電しているため「ATMも動かずカードや電子決済が使えない。手持ちの現金が少ない人はごく一部稼働しているATMに長蛇の列を作っている」とも話した。
コンドミニアムによっては発電機を備えているものもあるが、それでも「電気使用が限られるためIHコンロが使えず料理ができない。多くの被災者が冷蔵庫に残った食料で食をつないでいる」との現状も伝えた。
必要な支援について、一番必要なのは「水」、次いで「調理を必要としない(缶詰などの)食料」とした。また被災時の電気の必要性も痛感。「日本人会に潤沢な予算があれば発電機を購入し、緊急時の充電ステーションを設置したいのだが」と語った。
一方、お金に余裕がある世帯は発電機のあるホテルに一時滞在しているが、松田会長が数件回ったところ、どこも満員状態だったという。
▽Xマスには復旧を
国際交流基金の日本語教育専門家としてセブ市に住んで1年目の松田涼子さんは、コンドミニアムの自室で台風をやり過ごした。「風でコンドが揺れてすごかった。本当に吹き飛ぶと思った」と台風直撃の様子を振り返った。現在コンドに備え付けの発電機で電気は使えているが、台風が過ぎ去った17日の夜は「町中が真っ暗だった」。台風が通過した16日の「午後8〜9時ごろから未明にかけて、風、雨の順にひどくなっていった」とし、道端の木や電柱、看板、一部建物の倒壊もあり「こんなに見通しが良かったっけ」と翌朝驚いたという。「クリスマスまでに何とか少しは復旧してほしい」との思いを口にした。(竹下友章)