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6月23日のまにら新聞から

接種「拒否すれば逮捕」 大統領が国民に演説

[ 1245字|2021.6.23|社会 (society) ]

大頭領が演説で「接種を受けるか、逮捕・拘留かを選ぶことになる」と警告

マニラ市の駐車場でトライシクルなど公共交通機関や宅配アプリサービスの運転手らを対象とした一斉接種が行われた=22日撮影(EPA=時事)

 ドゥテルテ大統領は21日夜にテレビ放映された国民向け演説で、新型コロナウイルスのワクチン接種を拒む国民に対し「接種を受けるか、逮捕・拘留かを選ぶことになる」と警告した。ワクチン接種が思うように進まない現状にいら立っての発言とみられる。保健省は先に接種は任意との見解を示しており、同省をはじめ、司法省、大統領府は22日、一斉に大統領の過激な発言の「火消し」に努めた。

 大統領は21日の演説で、コロナウイルス流行について「危機的状況、緊急事態に直面している」とした上で「この国にいる限り、ワクチンを接種しなければならない。政府による無料接種を拒否する人は潜在的な病原体保有者だ。国民を守るために、逮捕を命じ、拘置所で隔離しなければならない。ワクチン接種か、拘置所に入るか、どちらかを選ぶように」と述べた。

 大統領は、接種呼びかけに応じない国民がいることに「私は腹を立てているだけだ」ともらした。一方で、「接種プログラムを利用しようとしない国民が40%いる」との認識を示し、「内務自治省を通じてバランガイ(最小行政区)議長に接種拒否者の集計を命じる」とも述べた。

 大統領発言について、カボタヘ保健次官は22日のテレビ会見で「ワクチン接種には、自由で事前のインフォームド・コンセント(医師と患者との十分な情報を得た上での合意)が欠かせず、同意書に署名する必要がある」と述べ、大統領の発言を事実上否定。発言は「お互いを守るため、予防接種を受ける必要があるという点を強調したい大統領の情熱と必要性から生まれたものだと思う」と述べた。

 ゲバラ司法相も同日、大統領の「真意」について「一刻も早く集団免疫を獲得する必要性を訴えるために、強い言葉を使っただけだと思う」と述べ、「弁護士でもある大統領は、ワクチンを接種しないことが法律上認められる選択であることを知っている。予防接種を強制し、接種を受けないことが犯罪になるような法律はない。現在入手可能なワクチンはまだ試験段階なのだから」と説明。ロケ大統領報道官は、接種を拒んだ人を逮捕するには「接種の義務化と、接種を拒否した場合の処罰を科す法律か条例が必要だ」と指摘する一方で、「法律や条例の制定は簡単だ。ワクチンが十分に供給されている場合はなおさらだ」と述べた。

 比の累計感染者は22日現在で136万人、死者は2万3千人を超え、感染拡大が深刻となっている。政府は今年中に人口の約7割に当たる7千万人への接種を目指しているが、20日時点で2回の接種を終えたのは215万人にとどまる。

 民間調査機関ソーシャル・ウエザー・ステーション(SWS)が5月に発表した世論調査(4月28日〜5月2日実施)によると、無料接種の機会があれば「受けるか」との質問に、接種を望む人が32%、望まない人が33%、迷っている人が35%とほぼ拮抗(きっこう)。その他の組織による3回の同種調査でも接種を望まない人が46〜61%にのぼる結果が出ている。(谷啓之)

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