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7月9日のまにら新聞から

戒厳令布告は悪者か 最高裁の合法判断

[ 744字|2017.7.9|社会 (society)|新聞論調 ]

 最高裁がこのほど大統領によるミンダナオ地方における戒厳令布告を合法と判断したことは、戒厳令布告の根拠となったミンダナオ地方の人々の気持ちを最高裁が認めたことを意味する。

 確かにフィリピン人にとって戒厳令のイメージといえば、拷問を受けて超法規的に殺害された死体やテレビ局が多数閉鎖されて番組の映っていないテレビ、そして朝刊も発行されなかった言論統制という傷ついた過去というものである。しかし、そのようなメディアで流布される過去のイメージとは裏腹に、ミンダナオの住民たちはマニラの同胞たちに対して戒厳令の別の表情を伝えてきている。つまり、ミンダナオ地方では現在も買い物客があふれ、ナイトスポットも繁盛し、テロリストの潜入が心配されるイリガン市でも外出禁止令が縮小され、路上の運転手たちもルールを守り、厳重なパトロールを行う治安部隊によって安全な街並みが戻っている様子だ。

 我々が理解すべきなのは、現在の戒厳令は国会の干渉もあり、説明責任も課されるということだ。しかし、反対論者たちは現在のミンダナオの状況が戒厳令を必要としないという点で議論を進めている。しかし、議論しなければならないのは、なぜアキノ前政権はテロリズムの脅威を放置してきたのかということだ。少なくとも5年前にはイリガンの市民らによって「イスラム国」(IS)を信奉する過激派たちが住民をリクルートしているとの指摘が出ていた。市民たちが過激派を支持していたのではないかという見方もあるが、ではなぜ18万人もの市民が過激派の手を逃れて避難するだろうか。

 そもそも戒厳令が悪い物であれば、なぜエドサ革命後に策定された1987年憲法に戒厳令の布告を定めた条項が明記されたのであろうか。(7日・ブレティン、ジョン・トリア氏)

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