米グーグル社が提供するオンライン地図サービス「グーグルマップ」は、比時間14日までに、南シナ海でフィリピンが管轄権などを有する海域に対する比政府の呼称である「西フィリピン海」を公式に採用した。同様に、同社のバーチャル地球儀アプリ「グーグルアース」でも同名称が採用された。比国軍は15日、声明で「2016年の南シナ海仲裁裁判で認められた比の主権的権利の国際的承認が確認された」と歓迎。「他の団体もグーグル社に続いてほしい」と期待を示した。ただ、まだ日本語版では対応しておらず、そこだけ「West Philippine Sea」と英語で表示されている。
一方、中国の林建報道官は定例会見で、「『南シナ海』は古くから国際社会で認められた共通の地名であり、世界各国や国連などの国際機関でも広く受け入れられている」と述べ、「南シナ海」という名称の正当性を主張するにとどめた。ただし、比政府の立場は、「南シナ海」の名称変更を主張しているのではなく、南シナ海の中に西フィリピン海があるという整理となっている。
比政府は、サンバレス州沖のスカボロー礁が中国に占拠された2012年に、当時のノイノイ・アキノ大統領が行政機関を対象範囲とする大統領令(行政命令)を出し、スカボロー礁やカラヤアン諸島(南沙諸島)などを含む比諸島の西部海域を西フィリピン海と正式に呼ぶことを決定。
マルコス政権になって中国との緊張が再度高まる中、オースティン前米国防長官が公式共同会見で南シナ海を「西フィリピン海」と呼ぶなど、中国との「国際世論戦」を通じて西フィリピン海との呼称は浸透していった。昨年11月には比の主権・主権的権利・管轄権が及ぶ海域を規定する比海域法が制定され、西フィリピン海の名称は法律で定義され、国家全体に及ぶ正式名称となった。 (竹下友章)