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5月7日のまにら新聞から

人生はむごい

[ 706字|2012.5.7|社会 (society)|新聞論調 ]

清掃員と大金

 最近のマニラ空港は、ある女性清掃員(32)の話で持ちきりだ。最低賃金をはるかに下回る給与で働く彼女は、外国人客が落とした120万ペソ相当の外貨が入ったポーチを空港事務所に届けた。

 彼女は第1ターミナルの税関近くの床を清掃中、ポーチを発見。猫ばばしたいという本能に負けず、空港事務所に届けた。彼女は奴隷のような給与にもかかわらず「盗めば、それが不運の始まりになるかもしれない。罰が当たるのは嫌です」と話した。彼女の給与は月8千ペソ。1日404ペソの法定最低賃金(月給約1万2千ペソ)にも及ばない。120万ペソが3年分の給与に当たることを勘案すると、彼女の決心は並大抵ではない。

 空港側は、まるでそれで十分だと言わんばかりに、彼女に功労賞の賞状を渡す計画だ。一体全体、賞状が何の役に立つのか。少なくとも、並外れた善行に相応する賞金を与えるべきだし、できれば彼女がこれ以上搾取されないよう、空港で正規雇用した方がいい。

 この話を聞いて、1990年代にあった同様の出来事を思い出した。女性清掃員が100万ペソ相当の米ドルが入った財布をトイレで拾い、正直に届け出た。空港側は彼女に感謝の額を贈った。天国が彼女を待っていると思った人もいるかもしれない。

 しかし、実際には不幸が襲った。大金を盗まなかったことに激怒した内縁の夫から、ひどい暴行を受けた。空港近くの違法占拠民居住区に住む一家にあの大金が入れば、あれこれ買えたのにと。彼女は泥酔した夫の暴力に絶えきれず、別居した。清掃員の仕事を解雇され、2人の娘を福祉施設に預けなければならなくなった。人生は本当にむごい。(3日・トリビューン、ロイ・ロガルタ氏)

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