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4月30日のまにら新聞から

自身こそ偽善者

[ 714字|2012.4.30|社会 (society)|新聞論調 ]

大統領のメディア批判

 アキノ大統領は先日、マイナス面ばかり強調する報道が、観光客の足を遠のかせていると批判した。彼は突然、報道の専門家になった。

 大統領は鏡を見て自問すべきだ。否定的なニュースを生み出しているのは自分自身ではないか、と。雇用は創出されない。物価は上がり続ける。貧困状況は悪化する。国民はそんな大統領の失政にうんざりしているのだ。

 大統領はメディアが治安の悪さを批判する点も非難した。しかし、毎日、誰かが金品を奪われ、誘拐され、レイプされ、殺害されている。ジプニーやバスの乗客を狙った強盗は日常茶飯事だ。それでも、大統領は警察の報告を本当に信用するのだろうか。

 大統領が称賛する警察は、首都圏パラニャーケ市で実施された違法占拠住民の強制立ち退きで、住民に発砲した。そんな警察の提灯記事を書けと言うのか。

 ミンダナオ地方の電力不足解消のためには、料金値上げが必要だと住民を脅した大統領を称賛すべきなのか。2011年国内総生産(GDP)成長率を前年の約8%から3・7%へ減速させた大統領を評価すべきだろうか。

 「あら探し屋」とメディアを酷評した大統領は何とも滑稽だ。大統領こそ、本物の「あら探し屋」だろう。2010年の大統領選で、当時上院議員だった大統領は、アロヨ政権のマイナス面を批判し続けた。メディアが同政権をこき下ろすのを楽しんでいただけだ。

 政権発足からの2年間、大統領はコロナ最高裁長官を更迭し、後任に意中の人物を充てることに熱中してきた。その半面、友人や側近の汚職は黙認した。グッド・ガバナンス(良い統治)の成果は何もない。大統領は、偽善者であり、第1級の「あら探し屋」である。(25日・トリビューン)

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