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4月2日のまにら新聞から

勝者は上院議長

[ 738字|2012.4.2|社会 (society)|新聞論調 ]

最高裁長官弾劾

 コロナ最高裁長官の弾劾裁判で、一番の勝者は裁判長を務めるエンリレ上院議長だろう。世論調査によると、上院議長に対する国民の支持率は2011年後半の60%から71%へと上昇した。この恩恵を受けて、次期上院選の候補者に対する支持率調査でも、上院議長の息子のエンリレ下院議員の支持率が一躍トップランク入りしている。

 もちろん、フィリピンの上院議員選は知名度が物を言う世界で、レガルダ議員やエスクデロ議員、ホナサン議員など現職が強みを発揮するが、エンリレ下院議員の場合は「ジュニア」が付くものの、同じ名前であるために、父親の裁判長役をめぐる活躍が国民に強い影響を与えていることが読み取れる。

 それにしても、エンリレ議長はこの世で一番ラッキーな人かもしれない。彼の才能がそれを可能にしたという側面もあるが、歴史的巡り合わせには驚かされる。彼はマルコス政権からアキノ政権まで過去6代の政権に仕えてきた。特に、マルコス政権では、かの悪名高い戒厳令の施行について、エンリレ議長は当時、マルコス元大統領に次いで2番目に重要な役割を果たしていたのだ。しかし、アキノ政変が起きた際に、たまたま国軍本部に立てこもらざるを得なくなり、その後のピープルパワーにより、マルコス一族の追放につながる自由をもたらしたヒーローとして、祭り上げられた。

 エンリレ議長には、国軍内に改革組織を作り上げるという功績は確かにあった。しかし、歴代政権では大統領に忠誠を尽くすという姿勢を貫いた。そして、今回の弾劾裁判では、元弁護士という経験もあるが、彼は一晩で独立した魂を持つ年長の国家指導者として登場した。この国は魔術的リアリストが幅を利かす場所なのだ。(3月28日・インクワイアラー、コンラド・デキロス氏)

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