準同盟化「両国がオープン」 比日RAA予備協議開始へ
越川大使が近く比日政府がRAA本格交渉入りのための予備協議を開始すると明らかに
越川駐フィリピン日本国大使はこのほど、GMAニュースのインタビューに応じ、部隊訪問の際の手続きを簡素化するほか、訪問部隊の法的地位を定める円滑化協定(RAA)締結に向けた正式交渉に入るための予備的協議を近く開始することを明らかにした。大使はRAAについて「この種の協定は比で訪問部隊協定(VFA)と呼ばれている」と説明。「比日両国がこの件にオープンだ」とし、近い将来両国の防衛協力をさらに強化する枠組みができることに期待を寄せた。
比は米国とは1998年、豪州とは2007年にVFAを調印。常任の批准を経て発効した。日本は22年に豪州と、23年に英国とRAAを締結。比日RAAが締結・批准されれば、両国は「準同盟」といえる関係となる。
RAAが締結されれば、自衛隊がこれまで行ってきたオブザーバー参加や小規模な人道支援訓練以外の本格的な演習を比で実施することが可能となる。比日米豪4カ国合同演習の道もひらけ、自衛隊の東南アジア諸国連合(ASEAN)におけるプレゼンスが高まる。
越川大使は「比日両国は、両部隊の戦略的な相互寄港や航空機の相互訪問、さらなる防衛装備品と技術の移転、能力向上活動を通じ、防衛協力を加速化し、全面的な安保協力を一層強化すると決めている」と述べた。
また同大使は日本が供与した最新の巡視船を係留・停泊する施設の建設について比政府から要請があることを明らかにし、同施設の建設も将来的な支援の例として挙げた。また、日本製の巡視船を将来的にさらに増やし、比沿岸警備隊(PCG)の船艇と本部をつなげる衛星通信システムも準備中だとした。
越川大使は外務省政府開発援助(ODA)担当官だった2011年、比への44メートル級巡視船の供与を監督していたことを明らかにし、「PCGは44メートル級巡視船と10隻、97メートル級巡視船を2隻所有する。将来的にはさらに増える可能性がある。だから今PCGは桟橋やバースなど自身の停泊場所を持つべきだ」と指摘した。
▽東アは明日のウクライナ
大使は中国が海洋進出を強める南シナ海について「航行と飛行の自由を確保することは日本の国益にとってもインド太平洋地域にとっても極めて重要だ」と強調。南シナ海では「国連海洋法条約(UNCLOS)もそれに基づき下された2016年の仲裁裁判所裁定が順守されていない」と指摘した。
その上で、「尖閣諸島には毎日のように中国船が侵入し、日本の漁船を追いかけている」と述べ、中国の海洋進出に対し、比日が同じ境遇に置かれていることを説明した。
また台湾海峡を巡る問題については「最も深刻な根本問題だ」とし「岸田首相も今日のウクライナで起きていることは、明日東アジアで起こるかもしれないという強い危機感を表明している」と述べた。
そのリスクの顕在化を避けるため、「日本政府は航行と飛行の自由を確保するという共通課題に対応するため比などASEAN加盟国と極めて緊密に連携している」とし「ASEANがUNCLOSをはじめとする国際法の中で海洋の主張の対立をルールに基づいて解決するアプローチをとること」に強い支持を表明した。
日本政府が防衛三文書を改定し、防衛予算を国内総生産(GDP)比1%から2%に引き上げたことについては「地域の厳しい安全保障環境の変化に立ち向かう日本政府の決意だ。日本、ASEAN、そして世界が直面する危機に対し「これまで以上に積極的に取り組んでいく」とし、地域の安全保障に対し積極的な役割を果たす意思を明確に示した。 (竹下友章)