訪問部隊地位協定を「緊急支援」 比日「準同盟」化へ加速
ズビリ上院議長ら11議員が岸田首相を表敬。訪問部隊の法的地位を定めるRAA締結へ「緊急支援」
ズビリ上院議長は5日、上院の半数近くを占める11人の訪日団を引き連れ岸田文雄首相に表敬訪問を行った。同議長は「今回の訪日で、特に防衛省からの説明により、両国が直面する現在の防衛と安全保障の現実を明確に理解できた」と報告。「比日円滑化協定(RAA)締結に向けた支援をより大きな緊急性を持って取り組む」と述べた。
RAAは訪問部隊の法的地位を定めるほか、武器・弾薬などの防衛装備品持ち込み手続きの簡素化、訪問部隊の出入国時の審査・関税を免除する協定。比側が訪問軍協定(VFA)と呼ぶ協定と類似する。
日本がRAAを締結したのは豪州と英国の2カ国で、両国は日本の「準同盟国」と呼ばれている。比日間でもRAA締結の動きが進んでおり、昨年4月初開催された比日外務・防衛閣僚会合(2プラス2)では、「部隊の相互訪問を円滑化する枠組み」を検討することで一致。今年2月の大統領訪問では同内容が首脳レベルで合意された。
RAA発効には議会の同意が必要だが、条約批准権を持つ比上院の代表団が今回、賛意を示したことで、比が日本にとって3番目の「準同盟国」となる道筋が明確となった。
ズビリ議長は昨年11月に比日VFAに上院が賛成すると発言。5日の声明では、今年2月の大統領訪日に同行した際にもVFA締結の方法を模索する必要性を日本側に提起していたことを明らかにした。
同議長は「比沿岸警備隊(PCG)は毎日のように『外国のアクターら』から嫌がらせを受けており、それはわれわれの排他的経済水域(EEZ)における主権的権利を『剥奪』している」と首相に説明。「だからこそ、日本の2016年仲裁裁判所判断に対する支援と、最新の船艇や警戒管制レーダーなどの装備品の供給には感謝している」と謝意を伝えた。
2月のマルコス大統領訪日時に23年内に行うことで合意した岸田首相の比公式訪問に関しては、上下両院合同会議で首相が演説を行うよう招待した。
また、比が2月に地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に批准したことを報告。比日間の貿易・産業交流の促進に期待を示した。
訪問団にはマルコス大統領の姉で上院外交委員長のアイミー・マルコス議員のほか、ビリャヌエバ与党院内総務、エストラダ元大統領の息子のJVエヘルシト同副院内総務、昨年旭日大綬章を受章したビリヤール元上院議長の息子のマーク・ビリヤール金融機関・通貨委員長(元公共事業道路相)、13年に旭日大綬章を受章したアンガラ元上院議長の息子のソニー・アンガラ財務委員長、ガチャリアン財源委員長、ポー経済関係委員長、ビナイ観光委員長、ピア・カエタノ持続可能開発目標委員長、ラピド娯楽産業委員長が参加した。(竹下友章)