四月から七十五歳以上の高齢者を対象に新しく後期高齢者医療制度が発足した。これまで一世帯一枚だった健康保険証は扶養家族一人ひとりに分割され、七十五歳以上になると、配偶者も新制度に加入して新たに保険料を負担する。高齢者の医療費負担を国が五割、健康保険組合が四割、高齢者自身が一割と明確化するのが目的のようだが、高齢者・団塊族にとってはすこぶる評判がよくない。
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一番の悪評は後期高齢者医療制度というネーミングだ。後期高齢者の予備軍たちの会合になると、最近はいつもこの話題で持ち切りになる。「後期高齢者とは早く死ねということか」。酒が入ると批判のボルテージは上がる一方だ。役所の知恵者が決めたネーミングのようだが、第四コーナーを回った高齢者に「もたもたせずに早くゴールしろ」と通告しているように受け取れる。
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評判の悪さにスタート直前になって泥縄的に「長寿医療制度」と呼称変更を打ち出した。「高齢者をしっかり支えていく新制度だ」とPRに懸命だが、保険料はちゃっかり年金から天引きする。野党は同制度の廃止法案提出に続いて、保険料の天引き凍結法案を検討しているが、時間的にとても間に合いそうもない。新しい「後期高齢者医療保険証」が届かないなど病院の窓口で混乱も出ている。ねじれ国会の余波ではすまない。(富)