首都圏警察マニラ市本部マラテ分署のアルフォンソ・サリグンバ分署長(警視補)は19日、同市マラテ地区で15日に発生した邦人2人の殺人事件について、容疑者は日本からの依頼に基づいて被害者を殺害していたことを明らかにした。同日夕方に同市のモレノ市長が開いた会見で明らかにした。
殺害を依頼した人物の1人は、逮捕された容疑者の1人を以前運転手として雇っていた人物。その人物は、被害者らを殺害するために900万ペソ(約2300万円)の報酬を提示したという。マニラ市本部のイネス報道官は現地メディアに「容疑者は指示を出した日本人を『ボス』と呼んでおり、被害者を『パサワイ』(いうことをきかない)から処分しろと命じていた」と説明。今回の事件は観光客を標的にした強盗殺人ではなく、フィリピンで実行された暗殺事件という可能性が濃厚となった。一方、容疑者の弁護士は犯行への関与を否認した。
まにら新聞が入手した同警察の書類によると、逮捕されたのはパンパンガ州ミナリン町を住所とするアベル・マナバト(62)とアルバート・マナバト容疑者(50)。容疑は強盗でなく、改正刑法248条が定める殺人罪、および同308条の窃盗罪だった。2人は兄弟で兄のアベル容疑者が日本人相手のガイドをしており、弟のアルバート容疑者が銃撃を実行したとみられている。
警察は標的を定めた襲撃事件としており、もう一人の容疑者が遺体から所持品を持ち去ったことは捜査かく乱のためとみている。遺体から所持品を持ち去ったもう一人の容疑者はまだ逃亡中。マニラ市のモレノ市長は同日夕方開いた会見で「3人目の容疑者は特定できており、逮捕は時間の問題だ」とした。
「暗殺」の標的となった被害者について、サリグンバ分署長は「カジノで遊ぶために1~2カ月に一回フィリピンに来ていた」と説明。まにら新聞が捜査当局から入手した遺体写真によると、被害者の1人の背中には全面に入れ墨が彫られていた。被害者は福岡県在住のサトリ・ヒデアキ(53)さんと、静岡県在住のナカヤマ・アキノブさん(41)。
この事件が日本で大きく報道されことを受け、フィリピン旅行や出張のキャンセルが相次いでいることについて、モレノ市長は「ちょうど日本の投資家が来ようとしている時期にこのような事件が発生してしまった」とし「容疑者を捕まえるためにはフィリピン中を探す。一つの確かなことは正義は果たされるということだ」と宣言した。(竹下友章)