先月下旬から続いた豪雨災害後にレプトスピラ症が激増したことを受け、保健省は9日、首都圏の19カ所の医療機関で専用の救急窓口を開設したと発表した。首都圏の複数病院で、救急医療室(ER)が次々超満床となったことを受けた緊急措置だ。
先月下旬から今月はじめにかけ、季節風に三つの台風の襲来が重なり首都圏の多くのエリアで冠水被害が発生。冠水した道路を移動した人々の間で感染が拡大した。保健省によると、雨季が始まって1週間後の6月8日から8月7日まで、全国で2396人の新規感染者が確認された。
首都圏マニラ市では7月24日時点で18人だった感染者数が8月8日には141人に急増。うち78人が重症化し入院して治療を受けている。死者については、マニラ病院、サンタアナ病院でそれぞれ6人ずつ、ガットアンドレスボニファシオ記念医療センターでは3人、トンド病院、ホセアバドサントス総合病院、サンパロック病院でも1人ずつ報告された。また、マニラ市のサンラザロ病院では8月の5日間で7人の死亡が報告された。
▽逼迫する病床
マニラ市のフィリピン総合病院は先週、ERの病床使用率が約400%まで増加。その後減少に転じたものの、9日時点で約70~75人で満床になる同病院のERに200人以上の患者がいる。同病院は、スタッフの配置転換を行って対応に当たっている。
マニラ病院は6日時点でERが満床になったと発表。パディリャ医院長は、「多くの公立病院が同様の状況であり、レプトスピラ症患者が急増している」とした。また、モンテンルパ市のビアゾン市長は、「モンテンルパ病院では55床の緊急治療室に一時98人の患者を収容するなど、超満床状態になっている」と報告した。
重要患者の受け入れ先となっている国立肝臓移植研究所(ケソン市)は、体育館を開放してレプトスピラ症患者専用の仮設病棟を設置。8日時点で重症患者約200人を収容した。病床利用率は60%で、75%が透析患者、残りは呼吸器を付けている。
中程度から重症の患者を受け入れているマニラ市のサンラザロ病院はレプトスピラ床患者に125症のベッドを割り当てたが、9日までに124床が埋まった。
イーストアベニュー医療センター(ケソン市)は、ERに168人の患者を収容しており、広報担当は「これは異常事態だ」と訴えた。
▽初期症状で診察を
保健省のドミンゴ次官補は9日、ラジオに出演し、発熱や体の痛みといった初期症状が出た場合、早急に受診するよう強調。「さらなる症状が出るまで待たずに受診すれば、入院せずに抗生物質などの処方だけで済む」とした。
保健省は、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、黄疸などの症状が表れた場合は早めの受診をするほか、ドキシサイクリンなどの抗生物質を自己判断で使用せず、医師の処方に基づいて用いるよう呼びかけている。 レプトスピラ症専用の救急窓口を設置したのは、次の首都圏10市にある19医療施設。
マニラ市 ホセファベリャ記念病院、トンド医療センター、ホセレイエス記念医療センター、サンラザロ病院▽ケソン市 国立肝臓移植研究所、イーストアベニュー医療センター、フィリピンオーソペディックセンター、国立児童病院、フィリピン肺センター、フィリピン児童医療センター、キリノ記念医療センター▽マンダルーヨン市 国立精神保健センター▽パシッグ市 リサール医療センター▽モンテンルパ市 熱帯医学研究所▽マリキナ市 アモンロドリゲス記念医療センター▽バレンズエラ市 バレンズエラ医療センター▽ラスピニャス市 ラスピニャス総合病院▽カロオカン市 ホセロドリゲス記念病院▽マラボン市 サンロレンソルイス総合病院。