国家警察のトーレ長官は16日、首都圏警察各署に課した「通報5分以内対応」の基準を守らなかったとして、マカティ署のデラトレ署長を含む8署長の解任を決定したと発表した。他に解任が発表されたのは、パラニャーケ、マンダルーヨン、カロオカン、バレンズエラ、マリキナ、サンフアン各市の警察署長。首都圏16市1町の警察署のうち約半数が交代になる。
マカティ市のデラトレ署長は前署長に解任に伴い昨年12月に着任したばかり。邦人を標的とする連続拳銃強盗の対応で邦人コミュニティーとの連携を深めていただけに、署長交代とそれに伴うとみられる人事により、在マカティ邦人コミュニティーはコネクションの再構築に迫られることになりそうだ。当座のマカティ署長代行はレーコン・ガラドゥケ警視が務めるが、6月末からはナンシー・ビナイ新市長の任期に入るため、警察署長任命権を有する市長の交代に伴い別の新署長が任命される可能性も残る。
ABS―CBNニュースなどによると、トーレ長官は「(解任した各署長らは)緊急通報から5分以内に対応するという新基準に対応する能力がない、または従おうとしていないと判断した。このままでは大統領の命令を遂行できない」と理由を説明。
マルコス与党陣営は盤石の候補をそろえたはずの5月の上院選で、10人中5人を落選させるという不本意な結果となった。それを受けて大統領は「政府のパフォーマンスに国民が失望している結果」とし、「仕事ができない公務員に責任を課す」という方針を打ち出した。「ドゥテルテ政権期と比べ体感治安が悪化した」という声が庶民から聞こえる中で、今月新たに任命されたトーレ長官は、高いハードルを踏み絵として、自身が掲げる実力主義の徹底に大ナタを振るった格好だ。
トーレ長官はまた、首都圏の対応目標時間を「3カ月後には3分以内に短縮する」と表明。さらに、ネグロス島地域、西部ビサヤ地域、中部ビサヤ地域の本部長も解任する可能性があると述べた。
同長官は着任後に「3分以内対応」の実現可能性について、「私が首都圏警察ケソン市本部長時代に既に実現している」と述べている。(竹下友章)