在フィリピン日本大使館は19日、訪日観光を目的とした短期査証(ビザ)の申請手続きを効率化させるため、従来の認定代理申請機関を通じた申請受付を終了し、4月7日から「日本ビザ申請センター(JVAC)」を開設、この新センターにビザ申請を集約すると発表した。ビザセンターの運営はVFSグローバルが受託し、フィリピン国内の5都市に拠点を設ける。
在フィリピン日本大使館によると、フィリピンからの訪日観光客数が急増しており、大使館の査証業務の負担が増大し、迅速な対応が困難となっている状況を受け、日本政府がビザ申請手続きの合理化を目的にビザセンター方式での運用を決定したという。日本大使館では昨年9月18日からコンペ方式で受託業者の入札を行っていた。
JVACは、首都圏パラニャーケ市とマカティ市、ケソン市とセブ市、そしてダバオ市の5都市に設置される。営業時間は、月曜日から金曜日の午前7時から午後4時までだが、申請時間については、マニラ首都圏の3拠点では午後2時まで、セブ市およびダバオ市では正午までの受け付けとなるので注意が必要。ビザ申請には、申請料金のほか、520ペソのセンター利用料が必要となる。日本大使館ホームページ上の査証申請に関するページも19日から切り替えられている。
これまで日本滞在ビザの申請は、在フィリピン日本大使館が認定した7つの代理申請機関を通じて行われていたが、4月6日をもってこれらの機関での申請受付が終了する。ただし、委任状により旅行代理店を経由してビザセンターに申請することはまだ可能となっている。新体制では、申請手続きの効率化が期待される一方、オンライン予約が必須となり、利用者にとっては手続きの負担が増える可能性がある。従来は代理店を訪れて申請書類が受け付けられたが、新制度では予約が必要となるため、申請受付のタイミングに制約も生じる。緊急時の渡航の他、外交・公用、日系人や日本人実子に関わる査証申請、2004年以前から登録番号を有している「興行」に関わる送出機関は、大使館・総領事館へ直接申請できることに変更はないとしている。
日本大使館では、JVACから領事部へ持ち込まれた査証申請の標準処理期間は従来通り5営業日以内とする一方、査証の有効期限が発給日から3カ月であることから、当面は引き続き、日本入国予定日から3カ月以上前の段階で、2週間から2カ月程度の余裕をみて申請して欲しいとしている。
▽正確な説明の機会を
フィリピン政府公認の人材募集海外送出事業者団体APLATIPの役員は、「加盟団体や取引のある認定代理申請機関から情報は届けられていて、観光で日本へ渡航する短期査証への対応が主眼だと受け取っているが、日本向け人材の査証申請も新方式で行うことになる。実際の運用がどのようになるのか分からない点もいくつかあり、円滑な送り出しに支障が起きないことを願っている。技能実習生、特定技能者など比人海外労働者の日本への送り出しは、年々増加しているので、日本が必要とする労働者に関わる制度変更の情報に関しては、移民労働者省のジャパンデスクと日本大使館が共同で送出事業者に直接、正確な説明の機会を充実させてくれると大変ありがたい」と語っている。
一方、ビザ申請センターの運営を受託したVFSグローバルは、2001年にインドのムンバイで設立され、各国政府や外交機関向けにビザ申請業務を提供する国際企業。現在ドバイに本社を置いており、オーストリア、オーストラリア、アイスランド、ラトビア、ノルウェー、スウェーデン、英国など140か国を超える政府と契約を結び、世界3500か所以上の申請センターを運営しているとされる。日本政府のビザセンターの運営実績としては、インド、インドネシア、タイ、ベトナム、アラブ首長国連邦(UAE)などがある。フィリピンでも、すでに他国のビザ申請センターを運営している。(青柳一臣)