ドゥテルテ前大統領は 比時間12日午後11時50分過ぎにオランダに到着し、その後、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)の収容施設に収監された。収容施設前には数十人の支持者が集まり、「ドゥテルテを返せ」と声を上げた。オランダ・ウトレクト大のイバ・ブクシック助教によると、「武力紛争でも選挙関連暴力でもない初めてのケースであり、またアジアの元国家元首が審理を受けるのも初めて」という。
ICCのカーン主任検事は比時間13日に声明を発表。「ICCの予審裁判部は7日に発付した逮捕状で、ドゥテルテ氏が、いわゆる『ダバオデススクアッド』の創設者として、ダバオ(正副)市長および大統領を務めた2011から2019年にかけ、人道に対する犯罪である殺人を行ったと信じるに足る根拠があると判断した」と述べ、ダバオ正副市長時代の「超法規的殺害」問題も司直の手が及ぶことを説明。「逮捕状が執行されたことは被害者にとって大きな意味がある」とした上で、「ドゥテルテ氏は近く法廷に現れることになる」とした。
▽「自分が全ての責任負う」
ドゥテルテ氏はオランダ到着前、自身のフェイスブックでライブ配信を行い、支持者らへのメッセージを語った。同氏は「私は大丈夫だ。心配していない」とした上で、「これは法と秩序に関する問題。警察と軍には『自分の職務を全うせよ。私が責任を取る』と言った。過去に何があろうとも、私が法執行機関と軍の最前線に立ち、守る」と述べた。
メッセージの結びには、「長い手続きになるだろうが、私は祖国に尽くし続ける。なるようになれだ。どうなろうとそれが私の運命だ」と述べた。これが、ICC施設収監前の最後の言葉となった。
▽裁判は1年以上
ICC裁判官の経験を持つポール・パガラガン教授(フィリピン大)はシンガポールのテレビ局CNAに出演し、「これまで類似したケースは扱ったことはない」としながら、ICCでの審理の見通しについて「ドゥテルテ氏が直面する罪状は、殺人という人道に対する犯罪で、一つだけ。1年はかかるが、他のケースのように3年以上かかるとは思わない」との見解を示した。
ドゥテルテ氏の支持者が比最高裁への申し立て通じてドゥテルテ氏を帰国させる可能性については、「既に司法管轄権はICCに移っており、判決が出るまでドゥテルテ氏を帰国させることはないだろう」と述べた。また、「(ICCの根拠条約である)ローマ規程には国家元首への免責の概念はない。現役大統領でも裁くことができる」と説明した。
外交上の影響については、「現時点でドゥテルテ氏のために声明を出しているのは中国だけで、大きな問題はない」と述べた。(竹下友章)