首都圏タギッグ市のマニラ日本人学校（ＭＪＳ）のグラウンドで８日、第23回マニラ日本人盆踊り大会が開催された。首都圏の日本人コミュニティー最大級である同イベント。開場する午後４時前には既に、ＭＪＳの周りは駐車された車でずらりと取り囲まれた。盆踊り大会を主催するマニラ日本人会の岡本和典会長はあいさつで、「昨年の来場者は約５４００人を記録したが、今年はそれより多くなるとのこと。日本でもここまで大きな盆踊り大会はなかなかない」と報告。「しっかり飲んで、しっかり食べて、しっかり踊って、いっぱい笑って、楽しんでください」と呼びかけた。

　岡本会長はさらに英語で「日本に行かずに日本の文化に触れられる素晴らしいイベント。だからお金を節約できる！」と声を上げると、会場から一段と大きな歓声が上がった。

　赴任後初のマニラ盆踊り大会の参加となった遠藤和也駐比日本国大使は、浴衣姿で登場。やぐらの上で行った日本語と英語で行ったあいさつで、「日本の方とフィリピンの方と、大いに交流していただきたい」と呼びかけた。また、同日３月８日は国際女性デーであることに触れ、全ての女性と男女共同参画に関わっている人々に感謝と祝福を表明すると、会場の女性たちから大きな歓声が上がった。

　来場者の約半分は比人が占め、その中にはアニメのキャラクターのコスプレをする比人の姿も多く、日本文化をマニラで体験する交流イベントの側面が一層強まった。「テニスの王子様」のコスプレで友人と一緒に来場したニコミゲル・クルスさん（日本の政党機関誌特派員）は「日本大使館のＳＮＳで知った。昨年はセブの盆踊りに行った。今日は楽しみたい」と相好を崩した。

　出店（でみせ）では、蛸壱、うな吉、オニギリモンスター、みんなのスーパー、ベークショップトモノなどの比でビジネスを展開する日系レストラン・食料品店が出店。本物の味を求めて長蛇の列ができた。また、出し物では、来比中の扇寿舞踊団・扇寿栄之丞さんがＭＪＳ和太鼓クラブとコラボし歌舞伎舞踊を披露。来場者はこぞって携帯やカメラを向けた。

　▽比の社会課題に取り組む邦人女性

　国際女性デーだった今回の盆踊り大会でも、草の根で比の女性や子どもの支援に汗を流す日本人女性たちの姿があった。

　国際協力機構（ＪＩＣＡ）の海外協力隊として、30年以上の歴史を持つ日系ＮＰＯ法人「アクション」に派遣されている前川未歩隊員は、中部ルソン地方の貧困世帯の母親らと一から作り上げた、バッグやアクセサリーを来場者に紹介、販売した。

　ファッションを通じた貧困世帯の子どもと母親を支援するＮＰＯ「ディアミー」は今回で３回目の出展。小村萠現地責任者らは同団体が運営する裁縫学校の生徒の作品のほか、今回新たにマニラ市トンド地区の母親たちが作った廃品グラスを利用したキャンドルも販売した。小村氏は「盆踊り大会では、企業の方との出会いもあり、ここから日系企業とのパートナーシップも進んだりする」とし、同大会の「つながりの場」としての意義を強調。同団体の裁縫学校「ココラボ」で学ぶ、スーザン・ギストさん（54）、ジュディス・ミニャノさん（30）も自分たちで作成した製品を自ら販売。「とても興奮している」と口々に語った。

　駐在員の妻らによって20年以上運営されているボランティア団体「アクトⅢ」の青木紹子代表らは、パートナー団体であるマニラ市マラテ地区の住民相互扶助団体「アライカプア」から仕入れたバッグなどのリサイクル製品を販売。青木代表は、「販売益はＮＧＯ『バラニエ』の運営する保護されたストリートチルドレンなどが暮らす児童養護施設の児童にお菓子などを届け、日本の文化を教える支援活動に当てられる」と説明した。

（竹下友章）