首都圏の配電会社、マニラ電力(メラルコ)に対する批判が高まっている。電気料金が高止まり状態にあるためだが、料金設定の仕組みにはいくつか不可解な部分がある。
その一つは、メラルコが独立系発電業者(IPP)から購入している電力卸値が、国家電力公社の卸値より高く設定されている点だ。これらIPPを運営しているのは、メラルコを経営するロペス財閥。つまり、割高の電力を所有企業間で売買したツケが利用者に回されている。
さらに、配電過程で生じる電力のロスを「システム損失負担」との名目で、利用者に肩代わりさせている。電気料金に占める同負担の割合は八%。利用者は、メラルコが本来負うべき損失を補てんし、使わない電気の料金まで請求されているわけだ。
これら料金設定の「不透明さ」を理由に、メラルコ株の三割を保有する公務員保険事業団(GSIS)やエンリレ上院議員らは、財務情報の開示を要求しているが、ロペス財閥側が応じる気配はまだない。
電気料金への不満を募らせる国民や投資家、公務員の声を背に、アロヨ大統領はメラルコに電気料金引き下げを検討するよう命じた。これは、政権発足以来、比較的良好な関係を保ってきた同財閥に対する「宣戦布告」と言えるだろう。
しかし、ロペス財閥は電力から不動産開発、比最強とされるテレビ・ラジオネットワークまで手中に収める一大勢力。二〇一〇年の次期大統領選には独自候補を擁立するとの情報もある。アロヨ大統領の「戦い」は「国民、国益対ロペス財閥」の延長線上にあるわけだが、過去に同財閥に戦いを挑み、成功した大統領はまだいない。(6日・スタンダードトゥデー、エミル・フラド氏)