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ハロハロ

2003/3/31 社会

 ダバオ空港の出迎え用待合所で爆破テロが起きてほぼ一カ月たった。事件十一日前の二月二十一日午後、この待合所周辺で四時間近く暇つぶしを余儀なくされた。フィリピン航空マニラ便の出発が大幅遅延したためだが、執拗(しつよう)に靴磨きしろと付きまとう少年らには閉口した。仕方なく、最寄りの食堂に「避難」したものの、そこにも大勢の少年らが待ち構えていた。

 これでは食事も読書も落ち着いてできないと腹をくくった。靴を磨いてくれたのは小学四年生、十歳の男の子だった。靴墨で汚れた布袋から古ぼけた歯ブラシと白クリームを取り出し、小さな指を使いていねいに磨き始めた。その横顔に自分の少年時代の面影が重なった。終わる前に袋の中に五十ペソ札をそっと差し込み、少年の耳元で「一回きりだぞ」とつぶやいた。

 間もなく戻ってきた少年は「名前は」と尋ねた。精一杯の謝意だった。「また会おうな」とだけ答えた。他の少年を制止してくれたのか、その後はゆっくり本が読めた。事件の死傷者には子供が目立った。いまだに「あの子は無事か」と気になっている。貧しさ故、家計を支えようと必死に生きる少年らを巻き添えにした無差別テロ。言葉を失う思いに駆られる。(康)

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