マルコス大統領は16日、ディゾン運輸相、テオドロ国防相らを伴い、首都圏地下鉄キャンプアギナルド駅(ケソン市国軍本部敷地内)を視察した。遠藤和也日本国大使、国際協力機構(JICA)フィリピン事務所の馬場隆所長らも同行した。視察後大統領は記者団に対し、「2028年までに開通できると期待している」と繰り返し表明した。首都圏地下鉄の部分開通は以前は2028年を目標と見込んでいたが、それが29年、32年とずれ込んでいた。
大統領府広報室によると、掘削中のトンネルの中をマルコス大統領が今回のようなかたちで目視点検するのは初めて。中間選挙後にマルコス氏は、インフラ建設の遅延の解決や体感治安の改善など、内政で目に見える成果を出す方針を打ち出したが、そんな中で政府が「世紀の事業」と位置づけながら遅延が続く、フィリピン初の地下鉄の建設事業の加速化に発破をかけた格好だ。
仮設昇降機で地下に降り、移動用の小型鉄道でトンネルの掘削地点まで進んだ大統領は、オルティガス駅(マンダルーヨン市)向きの掘削機の発進に立ち会った。
視察を終えた大統領は記者団に「日本の掘削機は非常にスムーズに動いていた。すばらしかった」と笑顔で報告。「日本は重工業・建設分野ではトップ。正しいパートナーを選んだ。日本の専門家がフィリピンの技術者にノウハウを教えてくれている。日本国大使は事業を着実に進めることを確実にしてくれる」と説明。「地下鉄により、バレンズエラ市からマニラ空港まで現在2時間かかる移動時間をたった40分に短縮できる。交通問題の改善は全国民が望んでいることだ」と強調した。
キャンプアギナルド駅を含む首都圏地下鉄CP103工区は三井住友建設が施工。首都圏地下鉄はJICAの円借款事業の中でも日本の技術を活用する本邦技術活用条件(STEP)が適用されている。
今年2月に就任したディゾン運輸相は3月、ラジオ番組に出演し「就任して省内の業務や用地取得問題があることを認識した」とし、「遅延が多数発生しており、28年までの部分開通は難しい」と述べていた。(竹下友章)