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ドイツ文化センター

2002/10/6 社会

文化政策重視の象徴

 人混みでごった返すケソン市クバオを抜け、オーロラ通りを西に二キロほど進むと、ツタに覆われた白亜、二階建ての洋館が姿を現す。大気汚染でくすんだ周りの建物と比べ、独特の雰囲気を漂わせるこの建物がマニラ・ドイツ文化センターだ。

 同センターはドイツ語教育と国際文化交流促進を目的とした国際的な組織、ゲーテ・インスティトゥート(本部ミュンヘン、通称ゲーテ)により一九六一年に設置され、フィリピンにおけるドイツ文化普及の拠点となってきた。

 「ゲーテ」はドイツ政府の委託を受け、世界七十六カ国で計百二十五の文化センターを出先機関として運営している。東南アジアにはマニラのほか、バンコク、シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタに設置されている。

 「ザウバーマッヘン(清掃しよう)」をモットーとするドイツ人の暮らしぶりをうかがわせるように、館内は明るく、清潔さが漂う。一階には広さ約八十平方メートルほどの図書館、二階にはセミナー用の教室や小型ステージなど六室が備えられている。図書館はドイツ語、英語の書籍など一万冊を所有、インターネットが無料で利用できるパソコン四台を備え、年間会員費はわずか五十ペソ。

 同センター総務課によると、会員数は現在、約千人。利用者は、語学クラスと同様、建築学、音楽、数学などを専攻する留学希望の学生や専門家などが多いという。

 文化交流行事としては、芸術から、社会状況、自然科学分野までカバーする多彩なイベントを開催している。今年九︱十二月までのスケジュールを見ると、ドイツ語教師養成講座、写真展、ジャズコンサートのイベントが目白押しだ。

 ドイツ語教室は初級、中級の六コース、計十クラスからなる。受講料は一講座(三カ月)三千五百ペソと決して安くはないが、定員約二十人の初級クラスは、留学希望の学生などで満席という。日本の「ゲーテ」と違い、館長だけが本国から派遣され、六人の講師は地元大学ドイツ語学科の比人教授などで構成されている。

 労働雇用省の二〇〇一年度統計では、ドイツへのフィリピン人海外就労者(OFW)数はわずか三十八人だ。七万四千人と大量のOFWを受け入れた日本と違い、両国は特別深い関係にあるとは言えない。

 日本の政府機関で「ゲーテ」に当たるのは国際交流基金であろう。だが、九八年度の予算、職員数を比較すると差は歴然としている。百九十三億円、三百三十三人の同基金に対し、「ゲーテ」は二百三十三億円、二千五百八十八人に上る。事務所数でも同基金は十八カ国、二十二カ所にすぎない。

 ある日本政府関係者は「英、仏、独など欧州各国は文化政策を重視してきた」と指摘してくれた。(阿部隼人)

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