ドゥテルテ前大統領が名誉党首を務めるPDPラバンが13日、首都圏サンフアン市フィリピンクラブで、5月の次期上院選に向けた決起集会を開いた。下院の動議で開廷が決定したサラ・ドゥテルテ副大統領に対する弾劾裁判について、エスクデロ現上院議長は選挙後の次期国会で行うと発表しており、弾劾法廷が設置される上院にどれだけドゥテルテ派を形成できるかがサラ氏の政治生命を左右するため、ドゥテルテ派にとって命運を決める選挙となる。
PDPラバンに先立ち、マルコス大統領は11日に、公認上院候補12人を集め決起集会を開催。次期上院選世論調査で独走するアーウィン・ドゥルフォ下院議員や、ボクシング元世界6階級制覇王者マニー・パッキャオ氏など有力候補を取りそろえた同集会でマルコス大統領は、ドゥテルテ政権で推進されたPOGO(オンライン賭博)事業や、多数の超法規的殺害が行われた「麻薬戦争」を念頭に、「わが国を外国人のギャンブルの場として売り飛ばされる時代に戻っていいのか、将来を奪われた子どもの血で道路が満たされる時代に戻っていいのか」と呼びかけた。
また、ドゥテルテ氏の「スピリチュアルアドバイザー」として知られ、現在人身売買・児童虐待容疑で勾留されている「イエス・キリストの王国」教祖のキボロイ師を念頭に「われわれの候補者の中には少女に性的虐待をしながら聖人ぶる人はいない」と皮肉り、さらに前政権が親中的だったことを念頭に「われわれの候補には中国を応援して拍手するものはいない」と発言。22年の統一選挙のときですら見せなかった対立陣営への「口撃」を解禁し、攻めの姿勢を見せた。
ドゥテルテ氏から警察長官に抜てきされ「麻薬戦争」を主導し、再選をかけて上院選に立候補したロナルド・デラロサ議員は13日の集会で大統領を名指しし、「あなたが私の手が血に汚れていると烙印(らくいん)を押したいのならそれでいい。しかし、危険を冒して作戦を実施した警察に対して無神経ではないのか」と反発。南シナ海問題については、「西フィリピン海(南シナ海で比が権益を主張する海域)で暴れまわっている連中を攻撃しよう」と過激発言を行い、「親中派」イメージに対抗してみせた。
ドゥテルテ前大統領も登壇し、「フィリピンは農業国。私の時代よりコメの値段が安くなっていたら彼(マルコス氏)に投票したらいい。コメの価格が高くなっていたらわれわれの候補に投票すべきだ」と発言し、コメ価格の高止まりに苦しむマルコス政権をやゆした。
PDPラバンの次期上院選公認候補には、デラロサ氏のほか、ドゥテルテ氏の「側近中の側近」として知られるボン・ゴー現上院議員、「イエス・キリストの王国」のアポロ・キボロイ師、大物俳優のフィリップ・サルバドール氏ら9人が名をつらねた。マルコス陣営の広報責任者を務め現政権で最初の官房長官を務めたビクター・ロドリゲス弁護士も「鞍替え」してドゥテルテ陣営候補に名を連ねた。(竹下友章)