フィリピン空軍と米太平洋空軍は4日、1月以来中国が実効支配を強めるパナタグ礁(英名スカボロー礁)周辺海域を含む南シナ海の比排他的経済水域(EEZ)の上空で合同哨戒および空中迎撃訓練を実施した。 今回の演習で米空軍は可変翼超音速戦略爆撃機「ロックウェルB1」を2機投入。同爆撃機が南シナ海上の合同演習・哨戒に投入されるのは初とみられる。一方、中国軍同日にパナタグ礁の上空で定期哨戒を実施したと発表した。
比空軍のカスティーリョ大佐は4日の会見で、米軍の超音速戦略爆撃機について「比に上陸する予定はなく、本土から直接参加する」とした。同爆撃機は最高速度が時速1400キロを超え、巡航ミサイル攻撃などを含めた「スタンドオフ攻撃」が可能。グアムの米太平洋空軍基地に配備されている。
今回の合同演習の目的については同大佐は、「相互運用性を高め、空域認識と機敏な戦闘配備能力を向上し、両空軍共通の目的を達成する上で重要なステップ」と説明。近年の比中間の緊張が激化する南シナ海領有権・管轄権紛争との関係については、「この取り組みは比米相互防衛委員会・安全保障関与委員会の活動の枠組みに属し、今年予定している通常の訓練や活動の一部に過ぎない」と述べ、地政学的緊張とは無関係との立場を示した。
演習中の中国からの干渉については「演習中に中国の航空機やそこからの無線通信は検知も観測もされなかった」と報告した。
▽「平和損なうのは比」
南シナ海を管轄する中国人民解放軍の南部戦区は同日、「南部戦区空軍が黄岩島(パナタグ礁の中国名)の空域で定期哨戒を実施した」と発表した。その上で「その間、フィリピンは南シナ海の平和と安定を損なう目的で『合同哨戒』を行うよう域外国を招き入れた」と非難。「同戦域の中国空軍部隊は引き続き厳戒態勢を敷き、領土主権と海洋権益を断固として守る」と強調した。
パナタグ礁は以前は比が実効支配していたが、2012年に比中艦船のにらみ合い事件の後に中国が占拠。中国は昨年11月に一方的に同礁周辺への領海基線を宣言し、今年1月4日から周辺海域での中国海警局船による巡視が常態化している。(竹下友章)