ドナルド・トランプ氏が米時間20日正午(比時間21日未明)、第47代米国大統領に就任した。米ワシントンの連邦議会議事堂の円形大広間で開かれた就任式に、比からはロムアルデス駐米大使が出席した。これを受けマルコス大統領は声明を発表。「約250年の歴史の中でもう一つ平和的な政権移行を果たしたことについて、トランプ大統領と米国民を祝福する」とした上で、トランプ大統領および新政権に対し、「緊密に連携できることを楽しみにしている」と期待を表明。「強くて不変の比米同盟は、地域の繁栄と安全保障という共通のビジョンを堅持するため続くだろう」と強調した。
就任演説でトランプ氏は「世界にかつてなかった最強の軍隊を構築する」と宣言。その上で、「戦争の勝利だけでなく、戦争を終結させること、そして最も重要なこととして、戦争に参加しないことで成果を計ることになる」と述べ、対外戦争への不参加を重視する姿勢を明確にした。
同日中にトランプ氏は、不法移民政策で南部国境に非常事態宣言を発令した。米国内には推定37万人の比人不法滞在者がおり、在米比人の大規模強制送還が現実となる可能性も高まる。
同日、上院に国防長官就任が承認されたマルコ・ルビオ氏は、15日の公聴会でルサンバレス沖に展開する中国海警局の「モンスター船」に言及。「中国の行為は情勢を不安定化させている。われわれは比に(防衛の)コミットメントをしているため、中国はわれわれに『対抗措置』を取らせようとしている」とし、南シナ海有事の可能性を強く示唆していた。ルビオ氏は21日に日米豪印4か国協力「QUAD(クアッド)」の外相会談に臨む。
また、外交を代表する米国務長官に指名されているピート・ヘグセス氏(保守系FOXニュース司会者出身)は、同公聴会でASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国を回答できず、その代わりに「米国は韓国、日本と同盟を結んでおり、AUKUS(米英豪安保協力)にはオーストラリアがある」と回答。米国の支援もと設立されたASEANの初期加盟国で、アジア大洋州における米国との条約同盟国であるフィリピンの名前を挙げられない人物が米外交を担うことに、比国内で不安も呈されている。
ネットメディア、ラップラーによると、国際関係論の専門家で国立ポリテクニック大で教鞭をとるジョシュア・エスペニャ氏は、第二次トランプ政権との比との関係について、「ASEANが全体としてトランプ氏の優先課題でないのなら、国際人であるマルコス大統領のような人物が個人的にトランプ氏と接近することが前進の道となる」と指摘。「フィリピンにとっては、かつてないほどに立場を明確にし、半端な想定に交渉の場を支配させない機会だ」とした。ヘグセス氏の発言については「彼の無知さは落胆させるものだが、個別の閣僚候補だけでなく、トランプ政権のチーム全体としての方向を捉える必要がある」とした。
マルコス大統領は14日に行ったハリス元副大統領との電話会談で、政権移行後も米国との「強力でダイナミックな関係」を維持できることに期待を表明。ハリス氏は「比米関係の強化は米国で超党派の支持を得ている」と伝えていた。(竹下友章)