押山監督は同日に実施された「Pen CREATOR AWARDS 2024」の授賞式にも登壇。「絵をひたすら書き続けることは20年前から変わっていないですが、『Pen CREATOR AWARDS』のような賞を受賞することで、映像を作るクリエイターに対して理解が深まっていることが非常にありがたく思っています」と感謝を述べた。
トークセッションでは上映後の反響について、押山監督が「運がよかったと感じています。これまでもアニメーターとして映画やテレビシリーズに関わってきましたが、作品の出来だけではなく、タイミングや運も大切だと感じています」と振り返る。担当編集の林氏は「劇場版として上映時間が1時間を切る58分のフィルムというのはあまり前例がない中でしたが、内容のクオリティが非常に高ければ、十分に劇場での体験を楽しんでいただけることを実感できた作品でした」と感想を語った。
1作品あたり20~30人のアニメーターが参加するのが一般的なところ、わずか8人のアニメーターで制作が行われた「ルックバック」。押山監督は「僕自身、監督を務めながらアニメーターとしても多くの部分を担当していたため、仕事が溜まりがちでした」と思い返しながらも「短い映画であってもお客さんの満足度を高めたいという思いで、絵を濃密に仕上げ、原作を再現するために普段以上に時間をかけて描き上げました」と明かした。
また今後の目標について、押山監督は「『ルックバック』が素晴らしい作品だったからか、最近は自分でもマンガを描きたいと思うようになりました」と新たな挑戦への意欲を見せる。最後にアニメーターの魅力について聞かれると「モノを作るプロセス自体がすごく大事だと思っていて、作品は人を幸福にするものだと思っています。たとえヒットしなくても、作品を作っている時間そのものが幸せで、完成すればさらに幸せを感じられます。そのうえアニメーターは、目の前のアニメーションの作業に没頭し続けられる、特別な仕事だと思います」と答えた。
イベント後の囲み取材では、蓮見が映画「ルックバック」の魅力について問われ、「マンガ家という作り手に関する話が描かれている中で、僕を含めたモノづくりをしている人からみても、1つも嘘がないことですかね。嘘がないからこそ、華やかさと地味な部分が中立に描かれながら物語が進んでいくところが僕はすごいなと思っています」とコメント。また映画の尺が58分という短さだったことについて「本当に熱量を持ったクオリティの高い作品であれば、短くても観る人を満足させることはできるだろうなと感じました。でも、やっぱりどこか怖いじゃないですか。『短いからこそ面白くなきゃいけない』って、どこかでみんな感じている思っています。そういう意味でもすごい作品だと改めて感じました」と述べた。
提供元:コミックナタリー