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手塚治虫文化賞贈呈式、りんたろうが語る手塚への思い 榎本俊二はギャグマンガ家にエール

2025/6/5 日本エンタメ

朝日新聞社が主催する第29回手塚治虫文化賞の贈呈式が、本日6月5日に東京・浜離宮朝日ホールで開催された。第29回ではマンガ大賞にりんたろう「1秒24コマのぼくの人生」、新生賞に城戸志保「どくだみの花咲くころ」、短編賞に榎本俊二「ザ・キンクス」が選出された。マンガ文化の発展に寄与した個人・団体に贈られる特別賞は、30年にわたりマンガ原画のアーカイブに尽力してきた業績が称えられ、一般財団法人横手市増田まんが美術財団が受賞した。

朝日新聞社が主催する第29回手塚治虫文化賞の贈呈式が、本日6月5日に東京・浜離宮朝日ホールで開催された。第29回ではマンガ大賞にりんたろう「1秒24コマのぼくの人生」、新生賞に城戸志保「どくだみの花咲くころ」、短編賞に榎本俊二「ザ・キンクス」が選出された。マンガ文化の発展に寄与した個人・団体に贈られる特別賞は、30年にわたりマンガ原画のアーカイブに尽力してきた業績が称えられ、一般財団法人横手市増田まんが美術財団が受賞した。

左から榎本俊二、りんたろう、横手市増田まんが美術財団代表理事の大石卓氏
【画像】第29回手塚治虫文化賞の贈呈式会場の様子。受賞者のサイン入りビジュアルが並んでいる

選考はスムーズ、「1秒24コマのぼくの人生」は完成度と芸術性を評価

第29回手塚治虫文化賞の贈呈式会場の様子

贈呈式では、朝日新聞社代表取締役会長の中村史郎氏が挨拶し、受賞作を紹介。続いて手塚治虫文化財団代表理事・手塚眞氏が祝辞を述べる。手塚氏は今回の受賞作が、どれも日常のささいな出来事を描いた作品であったことに驚いたと語る。「1秒24コマのぼくの人生」については、「177ページに数コマだけまこちゃんという名前の非常に生意気な子供が登場するんですけども、それは幼い頃の私でございました。そこに描かれてるようなことは事実でございます」と出席者の笑いを誘う。そして「実は僕もそのときのことを、たぶん一生忘れないんです」と笑顔を見せた。

その後、選考委員の南信長氏が選考報告を行った。今回の選考は比較的スムーズに進行したそうで、マンガ大賞については序盤から「1秒24コマのぼくの人生」と蔵本千夜「Battle Scar」に票が集まり、候補が絞られたのだという。「Battle Scar」はウクライナを現地取材し、その内容を基にしたリアルな戦争のエピソードが描かれていることから「今読まれるべき作品である」という評価で選考委員全員が一致。対して「1秒24コマのぼくの人生」は、りんたろうがバンドデシネの技法を用いて自身初のマンガを描き上げたこと、そして日本のアニメの歴史と個人の人生を絡めた作品の完成度と芸術性が評価され、選出された。

新生賞の「どくだみの花咲くころ」には、最初から票が集まったと南氏。周囲と同じことができない人がどう生きていくのかということを、教科書的ではなくマンガとして面白く読ませた点が称えられた。短編賞では、「ザ・キンクス」と大白小蟹の「太郎とTARO」で票が分かれたそうだ。絵物語のような作品である「太郎とTARO」については、大人も子供も楽しめる作品でありながら、考えさせられる戦いの物語という作品性を評価。一方「ザ・キンクス」は榎本の奇想天外な作風を残しつつ、新境地である家族ものを描いたことや、絵の見せ方や画面構成が高い評価を得た。どちらも実験的作品だったが、マンガ的表現を突き詰めた「ザ・キンクス」に軍配が上がったと語られた。

「1秒24コマのぼくの人生」は読む映画

りんたろう

賞の贈呈に移り、ステージに上がったりんたろうは「84歳の、新人の、マンガ家ではないりんたろうです」と冗談めかして挨拶をして笑いを誘う。そして「1秒24コマのぼくの人生」は、フランスのアニメプロダクションから、りんたろうの自叙アニメーションを作りたいと持ちかけられたことがきっかけで生まれたのだと語り出した。プロットを書き上げ、アニメの制作まで空白の時間ができたことから、パリ在住の監督助手にそのプロットでバンドデシネを作ってみてはと勧められて描き始めたのだとか。執筆には6年ほどかかったそうで、「バンドデシネのスタイルを頭でわかっていても、どう描いていいかわからなかった」と当時の悩みを明かす。そんなとき、監督助手から「アニメの絵コンテのように描いちゃえば」と言われたことをきっかけに、「読む映画にしよう」という思いで描き上げたと振り返った。描き終えたときには「人生二度生きた」という感覚を持ったそうだ。

日本での出版にあたっては、河出書房新社がフランスで出版されたサイズと表紙を再現。りんたろうは装丁について「日本の書店とか出版の中ではあり得ないサイズ」と語る。そんなこだわりを持つ出版社の担当、自身の健康を気遣ってくれる妻、作品制作を支えた監督助手への感謝を述べ、「全員の力で描けたもので、そういう賞だと僕は思ってますので、みんなを代表して僕はもらいたいと思っています」と晴れやかに笑った。

榎本俊二はギャグマンガを描く若者たちの希望に

城戸からは手紙が寄せられ、代理登壇したアフタヌーン編集部員がメッセージを代読した。城戸は「まさかこんな素晴らしい賞をいただけるとは」と受賞の知らせを受けた際の戸惑いを述懐しつつも、現在ではそれが喜びに変わったことを伝える。「どくだみの花咲くころ」のテーマについては、作品に登場する優等生と問題児のように、人を分断して考える人たちが多くいることに触れ、「それを乗り越えるものがあるとすれば、それは創作物に感動する気持ちだろう。それは、相入れないと思っていた他者を肯定する力があると、常日頃考えていました」と思いを明かした。そして「なぜ他人の作ったものにぐっとくるのか、抗いがたい魅力を感じるのか。由来はよくわかりませんが、そういう感情が原動力になって、自然とこのマンガを描くに至ったんだと思います」と綴った。

榎本俊二

榎本は登壇すると、マンガ家としての活動を「今年の秋で丸々36年になります。ずっと4コママンガやショートのギャグマンガを描いてきました」と振り返り、自身の作風について「とにかく不健全で、不謹慎で下品な……」と紹介する。「なので今回の受賞に関しては、皆さんもそうですけど、自分も驚いております」と心境を伝えた。作風のせいで賞が取り消しになるのではと恐れながら「このトロフィーをいただいたら、すぐにでも帰りたい」と不安げな様子を見せると会場は笑いで包まれる。最後に榎本は、自身もギャグマンガのファンであると言い、昨今ギャグマンガが読まれなくなり寂しく思っていると明かした。しかし「自分みたいに35年間、ちんちん、うんちばっかり書いてきたような人間でも、まかり間違ってこういうところに呼ばれることもあるんだという事実が、がんばってギャグマンガを描いている若い人たちにとって、少しでも希望になるんじゃないのかな」と力強くコメントした。

大石卓氏

一般財団法人横手市増田まんが美術財団からは、代表理事の大石卓氏が登壇。初代名誉館長である矢口高雄が手塚治虫に影響を受けたことや、横手市増田まんが美術館最初の特別展が「手塚治虫・矢口高雄まんが二人展」だったという話からは、開館30周年を迎える今年の受賞に縁を感じさせられる。「この賞の受賞を一番喜んでいるのは、天国にいる矢口先生なのではないかな」と矢口に思いを馳せた。マンガ原画の保存については「非常に地味な仕事で、その仕事自体が直接お金を生み出すようなものではありません」としつつ、「マンガ原画というのは、確実に、そして着実に未来に残し伝えていく貴重な文化財」と熱弁。さらに今回の受賞については「これから原画保存に参画する仲間が増えていくことにも期待しながら、私どもも大いに精進を続けたい」と挨拶を締め括った。

りんたろうが「新たなチャレンジ」と挑んだ「メトロポリス」

左からりんたろう、秋本治

贈呈式後はりんたろうと、選考委員を務める秋本治による記念トークイベントが行われた。虫プロダクションのTVシリーズ「鉄腕アトム」で演出家デビューをしたりんたろう。当時の様子を尋ねられると「荒地があって、目的がないんだけど、とにかくブルトーザーで突っ込んでいくっていう。そんなレベルで作り始めたのが『鉄腕アトム』の最初でしたね」と苦笑いする。「鉄腕アトム」を制作していた頃は制作進行という役割がなく、描いた原画を次の工程の担当者に自ら運んだそうで、身がもたないという理由から制作部を立ち上げたのだとか。「それが非常に面白かったし、みんなパワーがあったからできたことですけどね」と懐かしんだ。「1秒24コマのぼくの人生」では虫プロダクションでの仕事の様子も描かれているが、秋本は「(虫プロダクションの歴史が)全部一直線に描かれていて。その後の繁栄まで描いてある作品はないですから、読んでいて、どんどん目が熱くなりました」と受賞作を称える。

「鉄腕アトム」がTVシリーズとして制作されたのは、当時長編アニメ制作のハードルが高かったことに理由があるとりんたろうは言う。映画館を持っていないと配給が困難だったことに触れ、徐々に普及始めていたテレビに着目したことがTVシリーズ制作のきっかけだったと述べる。1週間に1回放送されるテレビに制作が追いつかないと誰もが考えていた中、手塚はパーツを別々に描き、必要な部分だけを動かすリミテッドアニメーションの手法を提案。アニメは1枚1枚描くものだと考える人もいる中、さまざまな技術とアイデアで制作が行われたと明かした。秋本は作画に違和感を感じなかったと言い、「鉄腕アトム」を観たとき「アトムがしゃべる。かわいい声だねって。すごいね。マンガの絵とまったく同じだね」と盛り上がったと懐かしむ。「毎週アトムが出てくるんだって、本当にみんなワクワクしていました」と目を輝かせた。

その後、アニメ制作の現場からセルが消え始めた頃に話題が移る。秋本はりんたろうの監督作「メトロポリス」について、「デジタルの時代になって、もう一度手塚先生の作品をやろうよって言って『メトロポリス』を作り上げたのは、運命的な感じですごい」と興奮気味に話す。するとりんたろうは「自分のアニメの1つの目的としては、手塚さんで終わりたいって思いがあったんです。(自分のアニメ制作は)手塚さんから始まったので」と当時の思いを語り、もう一度何かにチャレンジをしようと思った際に「メトロポリス」が思いついたのだという。「手塚治虫って偉大な作家を、自分の中で食い散らかしてきた。それが嫌だ。だから、やっぱりちゃんとした手塚治虫をきちんとやって、それで、きちんと終止符にしたい」と当時の思いを述べた。

提供元:コミックナタリー

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