首都圏マニラ市キリノ・グランドスタンドで、10日と11日の2日間、日本文化を紹介するフィリピン国内最大級のイベント「マツリ・イン・マニラ」が開催され、のべ4万人以上が来場した。比を拠点にイベント企画を行う「オタキュートイベントDAO」が主催し、日本財団による協力のほか、30社以上が協賛した。イベントは、「アニメ」、「カードゲーム」、「ベイブレード(現代版のベーゴマ)」、「コスプレ」、「日本食」、「J-POP」の6カテゴリーから構成。日比の老若男女が楽しめるイベントとなった。
アニメや漫画への関心が高い来場者が多く、「銀魂」や「ぼっち・ざ・ろっく」など、日本のアニメキャラクターのコスプレを楽しむ人もいた。コスプレコンテストでは、仕掛けに凝った「ガンダム」や、主題歌を歌いながらステージを舞う「ワンピース」のルフィなど、こだわりに満ちた作品が披露された。「鬼滅の刃」の煉獄杏寿郎のコスプレで優勝した比人男性は、賞品の東京行き航空券を獲得。初めての日本旅行に胸を膨らませていた。また、「ワンピース」の主題歌を歌う大槻マキさんのステージも開催。アジア初の大槻さんのパフォーマンスに多くの比人が足を運び、その歌声に浸った。
たこ焼き、牛丼など、日本食を提供する屋台も賑わい、中にはソーシャルメディアのアカウントをフォローすることで、おにぎりを無料で提供する出展者もいた。フィリピン料理の屋台もあり、来場者は日比両国の料理に舌鼓を打っていた。
▽文化教育にも適した場
比ノーマル大マニラ校の日本文化愛好団体「プヌ・ナミ・マニラ」の卒業生有志団体は、昔ながらの日本の遊びを体験できるブースを出展。首都圏マンダルーヨン市から訪れた5人の子供たちが、けん玉やだるま落としを楽しんでいた。アイドルを通してけん玉を知ったという高校生は、初挑戦にもかかわらず全ての皿に玉を乗せることに成功。いつの日にか比のけん玉名人として名をはせる日が来るかもしれないと思わる腕前だった。
同団体のリゼルさんは、「いつもは日本文化の比重が大きいイベントが多いが、「マツリ」は日本文化とフィリピン文化が同じくらい押し出されている」と話し、催し物の多様性に感心していた。
▽日比交流の懸け橋に
盛り上がりを見せたイベントの裏には、2人の日本人の努力があった。オタキュートイベントDAOのプロモーター大原雄さんは、「『マツリ』は10年前に始めたコスプレイベントが原点。900平方メートルの会場で10回開催した実績が今回に繋がった」と話した。
大原さんによると、比の「オタク」はオープンで、純粋にキャラクターになりきってコスプレを楽しむ人が多い。また、定額制動画配信サービスの普及により日本で放映されているアニメが比でもリアルタイムで視聴できる時代になったことで、「今後も日本の文化を比をはじめとする世界へ広げたい」と意気込みを語った。
ディレクターの小林健三郎さんは、「多様なジャンルが集まり、誰もが楽しめるイベントを目指した」という。日本の祭のように屋外で開催するため、日程を雨の少ない乾季に設定。斬新な武道パフォーマンスを取り入れるなど、様々な工夫を凝らしたという。「来年以降も開催し、恒例イベントにしたい」と話した。
「マツリ・イン・マニラ」は、今回が初開催だったが大盛況のうちに幕を閉じた。日本の祭りと同様、店や人が鮮やかに交差し、活気にあふれるイベントだった。(宇井日菜、平山伊都可)