「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
30度-24度
両替レート
1万円=P3,820
$100=P5885

8月21日のまにら新聞から

比を属州か家臣の扱い 領海内で中国船が資源調査

[ 788字|2020.8.21|社会 (society)|新聞論調 ]

 比海軍のバコルド司令長官によると、南シナ海のリード礁で8月初めから活動が確認されていた中国調査船2隻が立ち去った。2隻は比政府から許可を得ず1週間居続けたが、その活動は外交的抗議を申し立てるのに十分なものだと同長官も認めた。比領海内のリード礁は海底に石油など豊富な天然資源が埋蔵されているとみられ、資源調査をしていたのだろう。

 中国船の活動は排他的経済水域での科学的調査を制限している国連海洋法条約に違反していることは明らかだ。比国防省によると、昨年だけで少なくとも15隻の中国調査船が比領海に立ち入っており、比外務省も抗議している。コロナ禍でも中国は南シナ海への進出を強化し続け、マレーシア、ベトナムが領有権を主張する海域にも調査船を派遣している。地域の安定を確立するという「南シナ海における関係国の行動宣言」の目標をないがしろにするものだ。

 昨年6月にリード礁周辺で中国船に沈没させられた比漁船の被害を忘れてはならない。比人船長と船員1人が死亡した海難事故で、船員を救助したのは中国船ではなく、ベトナム船だった。ドテルテ大統領は小さな海難事故だと平然としていたが、救助された船員たちを見舞うため、代理で西ミンドロ州の漁村に派遣されたピニョル農務相は、武装警官を連れていた。中国からの補償はまだ実現していない。

 パラワン州に属するパグアサ島の近海では中国漁船が押し寄せ、2月17日の1日だけで76隻が確認されている。バコルド司令官は外国人特派員協会の会見で、比の領海で中国軍は比海軍の活動を以前より「受け入れるようになった。中国の干渉なく、人員交代などができるようになった」と発言した。大統領が最近、自分は領有権の主張では「役立たずだ」と発言したことが影響している。中国は比をすっかり自国の州の一部か家臣と見なすようになった現れだ。(19日・インクワイアラー)

新聞論調