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1月10日のまにら新聞から

送り出しは全面禁止すべき クウェートでの比人家政婦殺害

[ 794字|2020.1.10|社会 (society)|新聞論調 ]

 クウェートでのフィリピン人家事労働者の死亡を受け、比政府は同国への労働者送り出しの部分的禁止を決めた。同地での勤務が初めて、あるいは以前とは別の契約で同地に働きに戻る労働者が対象となるが、この部分的渡航禁止は不十分と思われる。

 被害者のジェナリン・ビリャベンデさんは、雇い主の妻に、体が黒と青のあざで覆われるほど折檻(せっかん)されたという。昨年9月頃、彼女は斡旋業者に対し虐待と給与未払いを訴えたが、業者は何もしなかった。

 2018年2月にも、ジョアンナ・デマフェリスさんが、やはり同国の雇用主に殺害され、遺体が冷凍庫で発見された。しかし、3カ月後、比人労働者保護の協定をクウェート政府と結んでから、政府は同国への比人労働者送り出しを再開した。ベリョ労働雇用相は、今回の事件への公正な対応がなければ、部分的禁止は全面禁止に移行しうると述べている。加害者は逮捕されているというが、クウェート側の隠蔽(いんぺい)の恐れもある。

 2018年の協定では不履行の条項もある。例えば、雇用主の給与未払い時に、比人労働者に補償する第三者基金を設立することが定められているが、クウェート政府の要求によりまだ実現していない。しかも、比人労働者を支援する比の市民団体によれば、こうした基金があってとしても、虐待の抑止には不十分だという。

 一方で、政党アクトのゴー・ヤップ下院議員は、まずクウェート政府側に過失がなかったかを調査すべきで、送り出し禁止は取りやめるべきだと訴えている。しかし、もうそんな段階は過ぎている。ビリャベンデさんの遺体にはっきりと黒あざと青あざが残っていたことは、これまでの協定に不具合があったことの証明なのだ。これ以上、比人労働者が虐待され殺されるのを防ぐために早急に行動すべきだ。その行動とは慎重な調査などではなく、送り出し自体の全面禁止だ。(7日・スタンダード)

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