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8月25日のまにら新聞から

平等な「やり直しの機会」を 元町長仮釈放問題

[ 659字|2019.8.25|社会 (society)|新聞論調 ]

 「サンチェス元町長は人生をやり直す機会を得て更生した」とデラロサ上院議員が発言した。どうやらこの発言は冗談ではないようだ。1993年にフィリピン大学ロスバニョス校の学生2人を誘拐して殺害した、このラグナ州カラウアン町の元町長を仮釈放の対象にする話が持ち上がっている。

 ドゥテルテ政権初期、デラロサ議員は「麻薬戦争」を国家警察長官として指揮した。この「戦争」で命を奪われた麻薬の使用者や売人、女性や未成年、子どもも含めた犠牲者の数が5千人か2万人かは読者に委ねたい。この「良き」議員はどうして彼らに「人生をやり直す機会」を与えなかったのだろうか。

 デラロサ議員は警察時代によく「贈り物」を受け取ったなどと話していたが、議員になったらまず言葉が全てだ。彼は今後、自らの言葉によって苦境に追い込まれていくことになるだろう。もっとも、米国のトランプ大統領を見ていると、そうならない可能性もある。

 原則は議員が言う通り、誤りを犯した誰もがやり直しの機会を与えられるべきで、たとえサンチェス町長であれ、認められてしかるべきものなのかもしれない。

 麻薬取引が誘拐やレイプより軽い罪だとは言わないが、麻薬関連で殺された数千人は、少なくともこの元町長が法廷で自らを弁護したのと同様の権利が与えられなかった。地方自治体首長らをはじめ、高位の者には用意されており、貧しい者には届かない「不正義」がまかり通っている気がするのは気のせいだろうか。「やり直しの機会」は平等であるべきだ。(23日・マラヤ、ホセ・バヤニ・バイロン)

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