連邦制導入は必要なくなった サラ・ダバオ市長も反対声明
連邦制導入に関する議論が下火になって久しい。前回この議論が高まったのはドゥテルテ大統領が組織した諮問委員会が連邦制導入を含む憲法草案を発表した昨年9月から10月にかけてのことだった。そこでは18の地域ごとに知事とその閣僚、地域政府機関や地域議会、そして連邦最高裁などを含む連邦政府を発足させるという提案だった。しかし、それに対してドミンゲス財務長官とペルニア国家経済開発長官という2閣僚から即座に批判が出た。諮問委員会では130億ペソほどの予算で十分だとしていたが、2閣僚はそのような連邦制の導入に最大で2530億ペソの国家予算が必要だと強調したのだ。
下院議会は連邦制導入に向けた審議を行う時間がなく、5月13日の中間選挙後へと先送りされた。そして先週、大統領の娘であるサラ・ダバオ市長が連邦制導入に反対だとする驚くべき宣言を出したのだ。今、連邦制を導入すれば地方においてさらに政治的・財政的自治が世襲政治家一族に牛耳られてしまい、国にとって問題だと指摘した。さっそくソット上院議長がサラ市長の立場を尊重するとのコメントを出した。
大統領はこれまで連邦制議論を静観してきている。諮問委員会の提言も正式に議会に推薦しなかった。就任直後、バンサモロ自治政府の確立と連邦制の導入という似通った二つの政策を推し進めようとした。ミンダナオ地方のイスラム教徒に対する歴史的な不正義を正すために、バンサモロ基本法案の策定と自治政府の確立が必要だと強力に推し進めた。一方で、連邦制の導入については、それほど強力に訴えてこなかった。多くの政府高官たちは大統領が連邦制を打ち出したのは、バンサモロ基本法案の制定が議会で失敗した場合の予備政策であったのだと信じている。バンサモロ自治政府が機能し始めている今、政府全体を連邦制によって再構築する必要はなくなったのだろう。(1日・ブレティン)