大統領の今年一番の誤算か レッサ氏がタイム誌「今年の人」に
オンラインニュース機関ラップラーの創設者であり、ドゥテルテ政権の批判者でありつづけるジャーナリスト、マリア・レッサ氏がタイム誌によって「今年の人」に選ばれた。大統領は大したことではないと矮小(わいしょう)化しようとしたが憤慨しているようだった。
タイム誌は先週、サウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショーギ氏とミンマーで拘束されているロイター記者のワ・ロン氏とチョー・ソウ・ウー氏、そして襲撃を受けた米メリーランドの新聞社キャピタルと共に「真実をめぐる闘いの守護者」としてレッサ氏を選んだのだ。
今回、ラップラーの代表者が選ばれたことは、大統領府の報道担当にとり痛手だった。寛容と自制心を持っていれば避けられた事態だったに違いないからだ。まず証券取引委員会がラップラーに外国資本が入っているとして同社の営業許可の取り消しに着手。しかし、その試みは表現の自由に対する攻撃だと即座に批判された。そこで今度は国税局がラップラーやレッサ氏らに所得税の過少申告があったとして告発した。また、大統領もレッサ氏とラップラー社の記者による大統領府での取材活動を禁止した。しかし、これらの口撃や法的措置も大統領の思うように進んでいない。
そこにきてタイム誌による表彰である。フィリピンの報道状況に与える影響も大きいと思われる。ドゥテルテ大統領にラップラーへの弾圧を提案した者がいったい誰であったとしても、大統領に痛手を負わせた。
批判者を抑え込むどころか、批判者たちはオンラインニュースというプラットフォームを得て、反撃する声をさらに拡大させている。これこそ法の予期せぬ働きを示す一番の例だろう。大統領府こそがイジメの説教台を持っていると万人の知るところとなり、大統領であってもそのメッセージをいつも行き渡らせることはできない。(17日・スタンダード)