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8月21日のまにら新聞から

保護策を講じよ 消される目撃者たち

[ 734字|2016.8.21|社会 (society)|新聞論調 ]

 政府がもし、違法薬物密売に関与の疑いがある役人の取り締まりに固執するなら、重要犯罪人に対する目撃者の保護を徹底すべきだ。

 ビサヤ地方セブ州ラプラプ市でこのほど、2級巡査の男性警官が射殺体で発見された。身に着けていたのはパンツだけで、制服やM16ライフル、警察用バイクは別の場所で見つかった。

 捜査当局によると、この男性警官は、違法薬物取引の元締めとして暗躍していた警察幹部2人の目撃者だった。この幹部は「麻薬王」としてドゥテルテ大統領から名指しされた5人のうちの2人。5人はいずれも容疑を否認している。

 大統領はこれまで、違法薬物に関与の疑いがある軍・警察関係者、市長、副市長、検察、裁判官などの公人150人以上を特定した。うち一部について大統領は無実であることを認めたが、残りは有罪の可能性があると判断された。

 警察による捜査が始まり、複数の容疑者が身の潔白を証明するために出頭した。政府は目撃者全員の命を保証することはできない。しかし、重要目撃者に対しては何らかの保護策を講じるべきだ。

 この国で起きた重大事件の大半において、目撃者はしばしば暗殺の標的にされる。

 ミンダナオ地方マギンダナオ州で2009年に起きた報道関係者虐殺事件では、複数の重要目撃者が消されてしまった。殺害された違法薬物容疑者の多くは、警察が手を下した疑いもあるほどだ。違法薬物の取引は大規模なビジネスで、密売人は目撃者抹殺のためなら手段を選ばない。

 目撃者の殺害は、ジャーナリストや活動家などの殺害事件が未解決に終わる主な要因である。暗殺への脅威も、現在進行中の薬物取り締まりの障壁だ。政府は、目撃者の保護が可能であると証明しなければならない。(15日・スター)

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