生活はバラ色か
経済成長と貧困
経済成長と包括的な成長と発展が異なるように、有権者と政治制度全体の成熟は別物である。うわべは、フィリピンはバラ色に見える。国内総生産(GDP)は急速に伸び、昨年はアジアで中国に次ぐ成長率を記録した。
米格付け大手ムーディーズは「アジアの期待の星」と呼び、フィリピン証券取引所の総合株価指数は最高値を更新し続けている。アキノ大統領は、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。
しかし、暗い現実が国民に付きまとっている。国家経済開発庁の統計調整委員会は、昨年上半期現在、国民の28%が貧困状態にある、と発表した。2006、09年とあまり変わらない。カネはあふれているが、その行き先は金融市場であり「雇用を生み出す工場やプラントではない」と、バリサカン同庁長官も言っている。3月の世論調査では、国民の半数が貧しい、39%が満足に食事ができないと回答した。
バラ色の経済統計と国民が直面する厳しい現状について、何とかしなければならない。しかし、統一選を控え、政治家たちはそれを優先課題にしていない。政治家はきれい事を言うが、それは有権者の目にどう映るか気にしているだけで、持続性のある真の解決策は示さない。
地方の貧しい家庭は、施しや慈善活動で救済者を演じる政治家の「親切」に頼るほかない。この慣行のせいで、良心的な政治家が締め出されてきた。有権者が新たなタイプの候補者を選ぶことも不可能にしてきた。
希望はある。それは、有権者が現状を変えるために、統一選で成熟した投票行動をとることだ。毎日の食事をテーブルに用意してくれるのは候補者ではなく、職を持った一家の柱だ。(25日・スタンダードトゥデー)