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11月12日のまにら新聞から

不要な残忍さ

[ 743字|2012.11.12|社会 (society)|新聞論調 ]

死刑是非論が再燃

 ルソン地方カビテ州でこのほど起きた女性惨殺事件を受けて、死刑制度論議が再燃した。一方、米カリフォルニア州では先週、死刑廃止の州条例に関する住民投票が行われた。米国、中国、イラン、ベトナムの4カ国だけで、2004年に全世界で執行された死刑の97%を占める。フィリピンは死刑制度を廃止した139カ国の一つで、アジア域内では唯一、死刑のない国である。

 我が国の死刑制度は1987年制定の共和国憲法で禁止された。ラモス政権下の93年に制度が復活し、エストラダ政権下の2000年に初めて執行されたものの、アロヨ政権下の06年には再廃止する法案が成立した。しかし、犯罪の増加に伴い、死刑復活を求める声が再び上がった。

 死刑制度には犯罪抑止の効果があると言われるが、その根拠はない。アロヨ上院議員によると、フィリピンで死刑制度が実施された93〜04年の犯罪発生率は低下していない。米国で最も死刑執行が多いテキサス州の犯罪件数は全米50州で13番目に多い。

 司法制度に欠陥があるフィリピンでは特に、無実の者が誤審の結果、死刑を執行される可能性すらある。警察の不十分な捜査や政治的圧力が重なって、被告が法廷で無実を立証できないためだ。

 司法制度が確立された米国では、死刑を宣告された3人のうち2人が逆転無罪を獲得する、と言われている。

 死刑とは、無意味で残忍な復讐の行為であり、民主的な社会では廃止されて久しい。大半の州で死刑制度が容認される米国が、世界の指導国と位置付けられているのは、誠に皮肉である。

 フィリピンは、87年、06年に死刑制度を廃止し、国際社会で認められるようになった。今さら野蛮な社会に後戻りする必要はない。(9日・スタンダードトゥデー、バル・アベルガス氏)

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