現実化した脅威
路線バス爆破
米英両国政府などが比でテロ攻撃が発生する可能性を指摘し、自国民に渡航情報を出したのは2010年11月のことだった。警告をよそに、アキノ大統領は情報発令の根拠となった治安情報を精査することなく、渡航情報の解除を各国政府に要求し続けた。
この過剰反応を見て、「他国民向けの渡航情報に、なぜ大統領は頭に血を上らせるのか」と首をひねった外国政府関係者は少なくなかっただろう。
そして2カ月後。首都圏マカティ市のエドサ通りで路線バスが爆破された。各国政府の情報収集能力が比政府より優れていたことがあらためて示され、「根拠に欠ける」と渡航情報撤回を求めた大統領にとっては恥の上塗りとなった。
「テロ攻撃は起こらないだろう」と信じ、テロの脅威を重く受け止めなかった大統領。事件後も、事態を軽視する姿勢が見え隠れする。直後の記者会見では、ショッピングモールなど不特定多数が集まる商業施設ではなく、外国人がほとんど利用しない路線バスが標的になったことを指摘して、テロ攻撃の打撃がいかに小さかったかを強調しようとした。また、事件翌日に開かれた関係閣僚らによる対策会議にも出席しなかった。
就任以来、大統領は細々とした「小事」に時間を取られるのを敬遠してきたが、テロ攻撃という国の「大事」に対応するため、重要な会議に顔すら出さないのはいかがなものか。
国民は、バス車内であろうとショッピングモール内であろうと、わが身の安全が確保されることを切に願っている。しかし、警備態勢はなおざりなままで、大統領がテロの脅威を重視して対策を講じなければ、次はモールが狙われるだろう。(28日・スタンダードトゥデー、ジョジョ・ロブレス氏)