権力乱用の阻止を
危険な最高裁判決
最高裁は、任命で就任した政府高官に対して、選挙への立候補と同時に辞任を義務づけた共和国法を違憲とする判断を出した。判事14人中、8対6の過半数が判決文執筆者のナチュラ判事と共に違憲判断としたが、その1人であるナザリオ判事の4日付退官に伴い、中央選管による再考申し立てでの逆転を祈ろう。
国民は、大統領の座にありながら選挙運動をしようという大統領の思惑に怒りを募らせているが、大統領や顧問らは、今回の判決がこの怒りを静めてくれるだろうと踏んでいる。次期選挙に出馬する政府高官は、税金から給与を受け続け、選挙運動で政府機関の施設を利用するだろう。判決を導いた請求の原告は、アロヨ大統領の弁護士であるロムロ・マカリンタル氏。
プノ最高裁長官はじめ、カルピオ判事らが反対した。プノ長官は反対意見の中で、「自由や公正さを欠く事態は容認できない。国民には真の裁判官と政治色を持つ裁判官の区別は明りょう。政治を超越しなければ、法の絶対性は守れない」と反論。カルピオ判事は、地方で部隊を置く国軍や国家警察幹部が地方選に出馬した場合、不正が横行すると懸念する。中央選管のラファナン法務課長も、最高裁判事らによる反対意見と同様、公務機関の幹部、職員、国軍隊員の選挙運動への関与禁止を明記していることを強調する。
カルピオ判事の言葉を借りれば、「計画された惨事」となる。明らかな権力の乱用であり、彼らが選挙で勝利した場合、行政がどうなるかは想像がつくだろう。ナザリオ判事の退官でナチュラ判事側に残るのは7人。民主主義を守るために1人でも合憲側にまわってくれることを祈るばかりだ。(4日・マラヤ、エレン・トルデシアス氏)