VFAのリスク
米兵2人死亡事件
ミンダナオ地方スルー州で米兵2人が地雷攻撃で死亡した事件は、訪問米軍地位協定(VFA)の見直しの必要性を浮き彫りにさせた。比米両政府は同協定では米軍の軍事作戦参加も認めているとまで拡大解釈し、合同訓練を傘に比米両軍が軍事作戦を展開している。米政府は比における米軍の活動を通じて、自国の投資対象や自国民に迫った危険を精査することが可能だ。だが、米政府が受ける恩恵の代償を比政府が吟味したかは疑問が残る。
ブッシュ前米政権が米中枢同時多発テロ後に打ち出した「テロとの戦い」を受けて、比政府は米軍に同地方での行動を容認した。比政府の手腕を疑問視したマレーシアやオーストラリアに続いて、比政府自身も出口の見えないミンダナオ紛争ごと米軍に明け渡した。これにより米国からの援助を受ける半面、比政府は有力一族との関係を重視し、市民生活の向上を目指したミンダナオ開発は滞った。外国の援助により、比政府は主権を放棄し、同地方の大部分で安全保障のコントロールを失った。米兵は比国軍施設でスパイ技術を提供し、巡回警備でも比米両軍の協力関係を強めていった。比国軍の敵は米兵を標的とし、戦闘を仕掛けた。同州では数週間前、米兵が発砲事件を起こし、今回、地雷攻撃で米兵2人が死亡した。
アフガニスタンでの米軍増派に伴い、攻撃対象となっている国際テロ組織アルカイダなどの支持者が米軍や市民への攻撃を世界各地で行っている。比政府が同協定見直しに着手しない限り、比米関係を刺激し続けるだろう。西側とテロ組織という対立構図の前線に比が押し上げられる可能性もある。さらに、政府が「傭兵」として米兵を抱えている現状を加味すれば、国家のリスクは高まる一方だ。 (2日・インクワイアラー)