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10月5日のまにら新聞から

無能力を露見

[ 733字|2009.10.5|社会 (society)|新聞論調 ]

現政権の台風被害対応

 台風オンドイの豪雨、洪水被害発生から1週間。政府はメディア対策に気を遣い、肝心の災害対策を後回しにしている。歴史的な洪水被害の被災者には救援物資が届かず、物資強奪や車両強盗が報告されている。リサール州カインタ町にある国家災害対策本部(NDCC)の救援物資配給センターでは、国軍兵士が、食糧を求める被災者の勢いに圧倒されて、配給活動は中止に追い込まれた。

 アロヨ大統領はマラカニアン宮殿の一部を避難所として被災者に開放すると宣言した。しかし、警備上の理由から一握りの被災民を受け入れることにとどまった。国営テレビは大統領の長男フアンミゲル下院議員の娘2人が被災民に物資を配給する映像を繰り返し流した。洪水発生翌日に同議員が酒を買っている姿がインターネットで動画サイトに投稿されたことを打ち消す狙いだろう。

 大統領は米国訪問時の豪華夕食問題からメディアを避けていたが、災害を機に閣僚たちに指図し、ドレスを着て被災地を回る姿が目につく。次期大統領選与党候補、テオドロ国防長官も首都圏鉄道を利用したと意味もなく強調し、災害対策とかけ離れたスタンスをとる。そんな中、食料、水など生活必需品を求める被災者の声は止まない。

 だが、今年の災害対策基金の残金は2700万ペソ。大統領は国会に100億ペソの補正予算案可決を求めた。付加価値税徴収で設立した基金や経済刺激策基金と称して外国からかき集めた3千億ペソはどこに消えたのか。不透明な政権運営の結果、被災者は空腹となり、物資の手配は手に負えないほど混乱している。大統領の指揮能力を超えており、現状が好転する兆しもない。現政権の統制能力の欠落は、台風よりも甚大な災害となり、国民にのしかかっている。(2日・トリビューン)

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