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8月10日のまにら新聞から

平衡感覚の欠如

[ 724字|2009.8.10|社会 (society)|新聞論調 ]

国民芸術家選考

 時にすべての人が必要とするのは平衡感覚というものだ。政府高官がこの感覚を失うとそのつけは高くつく。

 アロヨ大統領は、アキノ元大統領の死去に際して喪に服すと言いながら、訪米中、自身の結婚記念日に、ニューヨークの高級レストランで比国会議員30人や彼らの家族、閣僚や在米フィリピン人組織の幹部らを招待して盛大に祝った。その出費は実に2万ドルに達したとニューヨークのある紙面で暴露された。

 これに似た平衡感覚の欠如が、大統領が発表した国民芸術家受賞者にも現れている。これはアキノ大統領時代に受賞者選出に関する慎重で長大な選考過程が課せられた。選考過程を経た後で、大統領はほぼ自動的に受賞者リストを追認し、発表していたのだ。

 関係者によるこのようなコンセンサスを経て宣言された国民芸術家賞に対してこれまで問題は起きていない。しかし、今回、アロヨ大統領が発表した受賞者のうち、大統領が独自に選んだ人物が2人も含まれていた。この行為は、彼女が国民芸術家賞を国家的認知の表現であることを忘れ、自分のペットとしてのアーティストに重きを置く、ある種の政治権力の表現として捉えたことを意味する。

 大統領が選んだ1人は演劇界に多大な功績を残しているセシル・ギドテ・アルバレス氏で、彼女の実績は受賞に相応しいだろう。しかし、彼女は現在、同賞を選考をする母体、比文化庁の長官で、今回の受賞者に連なることは倫理上問題がある。

 絵画部門で国民芸術家賞を受賞したカルロ・カパラス氏はコミックス作家として名を馳せた人物。彼は物語りを練るだけで、自分で絵は描かない。大統領は国内の芸術家や役人たちのコンセンサスを認め賞の威信を守るべきだ。(9日・インクワイアラー)

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