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4月13日のまにら新聞から

かぎは救出と犯人逮捕

[ 713字|2009.4.13|社会 (society)|新聞論調 ]

拉致事件の撲滅策

 拉致事件に対処する理想の形は、身代金を支払わないという原則を厳密に守ることだ。これが犯罪者に拉致は割に合わないことを知らしめ、将来の試みを防止することにつながる。次いで幾分理想に近いのが、身代金が支払われたとしても、その後、被害者が救出され、犯人も逮捕され、身代金が取り戻される事態だ。首都圏で拉致事件が多発した際、これらの原則が実行され、犯人が犯罪の果実を享受できなくなった。

 ミンダナオ地方南部のスルーとバシラン両州で拉致が相次いでいるのは、犯罪集団が被害者の解放と引き換えに金銭などと一緒に逃亡することが許されているからである。その際、えん曲表現として「宿泊代」が支払われたとも言われるほどである。拉致犯に支払われるのが「パティクル町ヒルトンホテル」の宿泊代であれ、犯罪集団を飢えさせないためのコメ支援であれ、拉致被害者の身柄と引き換えであれば、いずれも身代金だ。

 今回解放された国際赤十字職員のラカバさんの救出と引き換えに五百万ドルの身代金が支払われたとのうわさが飛び交っている。もしこれが本当なら、今後、国際赤十字の職員が同地方に再び姿を表した場合に、犯罪集団は即座に五百万ドルの価値を見い出し、職員たちも厳重な警備下で活動せざるを得なくなる。

 かつてマレーシアのシパダン島から外国人観光客らを拉致したアブサヤフのリーダーたちは三千万ドルをもうけた。今回の赤十字職員の拉致犯を追及していた国軍と国家警察合同部隊も、ゴードン上院議員の政治的思惑による干渉で犯人逮捕がとん挫させられた。スルーから身代金目当ての誘拐が無くなるよう、また残る職員の解放が実現するよう当局は今後も努力してほしい。(8日・スター)

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