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12月15日のまにら新聞から

新聞論調

[ 742字|2008.12.15|社会 (society)|新聞論調 ]

情報機密費活用を−住宅街銃撃事件

 首都圏パラニャーケ市の住宅街で警察と犯罪集団の銃撃戦で十六人が死亡した。バタオイル首都圏警察総監によると、警察は「タレコミ」を基に、犯罪集団を待ち伏せして銃撃戦となった。とすれば、情報をつかんでいながら、民間人が巻き添えとなったわけだ。

 作戦に従事した警官を責めるわけではない。犯罪のプロ集団摘発も容易ではないだろう。手りゅう弾発射砲やM16自動小銃を抱えた犯罪集団が先に発砲してきたとすれば、警官隊もすきを突かれたはずだ。

 だが、警察は十分な情報を持っていたのだろうか。情報機密基金が報道で取り上げられたのは、国家警察幹部による巨額ユーロ所持事件の時。国民は情報機密基金とは犯罪集団の監視ではなく、幹部の海外出張費と理解した。

 警察は銃撃戦で犯罪者十人を射殺し、追跡捜査で十五人を逮捕した。同総監は「少なくとも重要事件十五件を解決した」と胸を張った。だが、「解決」の代償は甚大で、少女(7)を含む民間人五人が犠牲となった。

 情報不足だけが問題ではない。少女と父親の乗った車が犯罪集団の車と類似していたため、警官は容疑者と判断したのだ。ある警官は「彼らを車の外に出せばよかった」と失態を認めた。

 警察特別行動部隊のような精鋭部隊が銃撃戦で混乱し、現場にいる全員を標的としてはならない。少女は車内で発見されたが、父親は車から数メートルのところで見つかった。父親は車外でも銃撃を受けたらしい。

 首都圏警察総監に続いて首都圏ケソン市本部幹部も「グループを壊滅状態に追い込んだ」と評価した。だが、警官の銃撃で未成年が巻き添えになったのは初めてではない。警察幹部が情報機密費数百万ペソを海外出張費に持ち出す現状では、悲劇は繰り返されるだろう。(8日・インクワイアラー)

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