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8月4日のまにら新聞から

パラドックスの正体

[ 694字|2008.8.4|社会 (society)|新聞論調 ]

「高成長」と格差拡大

 現政権下で富裕層はより豊かになり、貧困層の生活は厳しさを増した。中間層から貧困層へ転落する世帯も増えた。一方、国内経済は現政権下の七年、二十九・四半期の間、五%を超える勢いで成長を続けてきた。

 経済規模の拡大にもかかわらず、貧困問題がより深刻化するパラドックスはなぜ、いかに生じたのか。答えは、経済成長を適正な方向へ導けなかった政府の施策と努力不足にある。

 その一例は株式市場。現政権発足翌年の二〇〇二年、二兆ペソ程度だった市場規模は五年後の〇七年、約四倍の七兆九千六百億ペソまで膨らんだ。株を売買している投資家は四十三万人強なので、投資家一人当たりの保有株時価は〇二年の四百八十三万ペソから千八百五十万ペソに急増したことになる。

 株式市場の生んだ資金が新工場建設などに向かったならば、多少なりとも雇用拡大に貢献できたはずだ。しかし、富裕層が実際に選んだ投資先は、税制面の優遇措置などで投資の安全性が担保された携帯電話事業と発電事業であった。

 富裕層が座したまま資産を増やす中、貧困問題はより深刻化した。貧困ライン以下の世帯数割合は、〇三年の三〇%から〇六年には三二・九%へ拡大した。これは、三年間で八十万世帯、四百四十万人が貧困層へ転落したことを意味している。また、〇七年四月から〇八年四月の一年間で、失業率は七・四%から八・〇%へ悪化し、約二十四万人が新たに職を失った。

 食料品と石油製品の高騰という「邪悪な双子」に苦しむ貧困層とは対照的に、富裕層は現政権下で蓄えた資産を緩衝材にして「危機」とは無縁な生活を続けている。(7月29日・タイムズ、トニー・ロペス氏)

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