2重基準とルール
中古車輸入問題
国民の多くが現実感に乏しい空々しさを感じたであろうアロヨ大統領の施政方針演説。その翌日、上院で開かれた中古車輸入問題の聴聞会でも同様の空虚感が流れていた。
最重要証人として聴聞会に呼ばれたのは、エンリレ上院議員の義理の息子、ジェイムズ・コチャー氏。カガヤン特別経済区・自由港を介して大量の中古車を国内へ持ち込んだ人物とされる。
上院聴聞会は、疑惑の渦中にいる証人らに攻撃的かつ敵意に満ちた質問を浴びせ、国民の欲求や好奇心を満たすことで知られる。しかし、輸入問題の聴聞会では、コチャー氏に対する質問がほとんど出なかった。
これはなぜか。野党のピメンテル院内総務は「自分自身をこれ以上に困惑させないため」と理解に苦しむ弁明をしたが、コチャー氏と他の証人の扱いの違いは「二重基準」と言わざるを得ない。
さらに、中古車輸入問題で、聴聞会開催が必要かという疑問も残る。二年前の最高裁判決によると、経済特区を介した中古車輸入は違法。問題の核心は「輸入による経済への影響ではなく、現行法に沿っているか否か」(エスクデロ議員)と明確だ。
にもかかわらず、エンリレ議員は「最高裁判決は誤り」と公言し、エルミタ官房長官も「最高裁判決で違法性が認定されたのはスービック湾域自由港・特別経済区を介した中古車輸入だけ」との主張を繰り返している。
聴聞会で議員らが露呈した「二重基準」とエンリレ議員らの発言は何を暗示しているのか。それは、法治国家でありながら、一般国民向けと富裕層・権力者向けという二種類のルールを併存させるこの国の実情である。(1日・インクワイアラー)