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6月9日のまにら新聞から

ASEANの無策

[ 732字|2008.6.9|社会 (society)|新聞論調 ]

ミャンマー災害救済

 死者・行方不明者十三万人、被災者総数二百万人超を出したミャンマーのサイクロン災害で、東南アジア諸国連合(ASEAN)は加盟国ミャンマーへの効果的な支援活動を行えず、無策ぶりを露呈した。軍事独裁国のミャンマーは未曾有の災害発生に対し、欧米諸国からの支援提供打診をことごとく拒否した。

 事態を深刻に受け止めた国連の潘基文事務総長がミャンマーの最高指導者、タン・シュエ国家平和発展評議会議長と直談判し、外国からの支援受け入れを認めさせた。同議長は外国からの支援を「侵略」ととらえ、民主国家からの支援が自国民に与える影響を恐れたからだ。

 しかし、現時点で潘事務総長との約束が守られているとは到底思えない。業を煮やしたフランス海軍の艦船はタイに救援物資を預けて引き揚げた。米海軍の艦船も支援活動を断念、食料や復興用資材などの救援物資を積んだままミャンマー近海から「撤収」した。

 米海軍の高官は「十五回にわたり米艦船のミャンマーへの入港と救援物資搬入を要請したが、許可は出なかった。被災民を助けたかったが、実現できず、誠に残念」と怒りを表した。

 同じような事態が二〇〇四年十二月に起きたスマトラ沖大地震・津波災害時でもあった。最大の被害国インドネシアのイスラム勢力が当初、米国からの支援に消極的姿勢を見せたが、ユドヨノ大統領が米国からの支援受け入れを決断、被災民の命が救われた。

 それにしてもASEANの無策ぶりにはあきれる。外交には限界もあるが、インドネシアの教訓を生かせず、加盟国内協力という地域機構の本来の役割も果たせなかった。被災民に救済の手を差し伸べることもなく、見殺しにするミャンマーに加盟国資格があるのだろうか。 (5日・インクワイアラー)

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